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「一瀬……君?」
課長の顔がどんどん曇って見えてくる。
「すみません、何でもないんです」
鼻をすすって、涙を拭った。だけど、涙は拭っても、拭っても浮かんでくる。これ以上、こんな醜態見せたくないのに。
「ご、ごめんなさい」
涙声で口にした時、日なたの匂いがした。
課長がハンカチで涙を拭いてくれた。
「課長……」
「そんな顔されたら、どうしたらいいかわからないよ」
困ったような、心配するような課長の顔があった。
「課長、会社に行って下さい。遅刻しちゃいますよ」
「まだ大丈夫だよ」
「でも」
「泣いてる子を一人にしないよ」
課長がポンポンと優しく頭を撫でてくれた。
完全に子ども扱いされてる。だけど、嬉しい。
嬉しくて胸がいっぱいになった。
「好きです。課長に恋してます」
気づくと、心の声が出ていた。
課長に片思いして三年、初めて自分の気持ちを口にした。
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