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3 三年前の居酒屋【上村】
一瀬美月、30才。入社八年目の事務職。
今朝、突然一瀬君から告白らしきものをされた。
嘘みたいだ。
二十才近く年下の女性から告白されるなんて。
これは何かのイタズラか?
忘年会の夜のキスもびっくりしたが、今朝の告白はさらに驚嘆した。
一瀬君の事は27才の娘とそんなに変わらない年だったから、娘のように思ってた。
時々一緒に昼を食べて、弁当のおかずをあげて、料理やジャズの話をした。
確か夢は寿退社して、家庭に入る事だと、初めて会った時に聞かされた。だから、仕事であまり期待しないで欲しいとも言われた。
呆気にとられたけど、自分の意見を堂々と上司に言える彼女を、やる気のない部下とは思わなかった。それどころか、面白い子だと思った。だから、いろいろ任せた。
企画書を作ってもらったり、大きなプロジェクトにも参加してもらった。責任のある仕事を与えれば与える程、一瀬君は有能に働き出した。部下として申し分ない。結婚で辞めてしまうのは惜しい気がしていた。
しかし、幸せになってもらいたい。だから、辞める事に反対しない。そう思っていたのに、一瀬君が彼氏からプロポーズをされたと聞いた時、大事に育てた娘を盗られるようで悔しい気持ちになった。
あれはもう、三年前だったか。
本社勤務になって一年経った頃だった。
結婚すると打ち明けられた次の週、会社では話せない大事な話があると言われた。
「課長と二人だけで飲みに行きたいんです」
一瀬君にそんな風に誘われたのは初めてだった。
「どうしても課長に聞いて欲しい事があるんです」
仕事の相談だと思った。だから上司として、二人だけで飲む事を承諾した。
その週の金曜日、仕事帰りに二人で居酒屋に行った。
一瀬君と二人だけで飲みに行くのは初めてで、少し緊張した。
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