full moon

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妖精界の時の流れがゆっくりとは言え、朝は訪れる。朝になると、月が輝きを増して太陽に変化するという不思議。そう——いつだって満月はこちらを見ているのだ。 明日も仕事だという柚月とベッドに入ったのは数時間前。この間の夜と同じように手を繋いで眠りについた。正確には、眠りについたのは彼女だけなのだけれど……。 時間の経過と共に窓の外が白み始める。彼女の髪を撫でながら朝の訪れを静かに待っている。 目を覚ました時、まだ隣にいることを彼女は喜んでくれるだろうか。 世間一般の普通を与えてあげることはできないだろう。そのことで彼女を傷つけてしまうこともあるかもしれない。それでも、やっぱり彼女を手放すことはできない。そう思う。 「……朔……」 小さく自分の名前を呼んだ柚月の頬をくすぐるように撫でる。イヤイヤと首を振った彼女がふわりと目を開き、そして微笑んだ。 「今何時かな」 「まだ早いよ。今日は遅番でしょ? 」 「うん。じゃあ、もう少しこうしてて」 胸に擦り寄ってきた柚月を布団と一緒に抱きかかえる。手放せるわけないよ。朔は誰にともなくそう呟いた。
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