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スヤスヤという言葉がしっくりとくる寝息を立てながら、目の前で柚月が眠っている。その無防備な姿をじっくりと堪能しながら、先ほどのデートを回想する。
バルコニーの柵から飛び降りたことを、柚月はしばらく怒っていた。妖精の世界に辿り着く為にはあの方法しかなかった。そう伝えれば、彼女の怒りも少しはおさまったのかもしれない。
けれど、あんな恐ろしいことをしなくても妖精の世界には行けるわけで——朔は嘘をつくことなく素直にそう伝えた。
「もう絶対にあんなことしないで。約束して。分かった? 」
いつもはマシュマロの様にふわふわしている柚月が怒っている。怒っていても可愛い。そんなことを考えているのがバレてしまったのか、おもむろに左の頬をつままれた。
「朔。返事は? 」
「ふぁーい」
気の抜けた返事に、彼女は呆れたように笑い声を零した。
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