full moon

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どうしようもなく惹かれてしまう引力から解放されたくて逃げることにした。彼女の前から……。 側にいることが当たり前になってしまえば、妖精の癒しの効果が薄れてしまう。そのうち、彼女に必要とされなくなる。そのことが酷く恐ろしかった。 離れてしまえば、お互い元の生活に戻るだけ。そう思っていた。そう思っていたのに……。 澄んだ青空の向こうで白い月が微笑んでいるように、心の中にはいつだって彼女がいた。 「僕は諦めないよ。柚月ちゃんのこと」 「はいはい」 彼女は小さく肩を竦めていた。全く、子ども扱いするのはやめてもらいたい。そもそも人間界での自分の年齢は幾つなのだろうか。今度、これについても嶺二君に確認を取る必要がある。そう思った。
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