姿なきストーカー

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姿なきストーカー

「なんで…私は龍一と一緒に居たいの!龍一がこの世の中で一番好きで大好きなの!だからお願いもう一度考え直して!」 「無理無理。もうお前と感性が合わん以上は一緒に居てもキツイから。」 「嫌!そんなこと言われても私はずっと龍一と居たいから!」 愛花が俺の身体を思い切り握りしめるように抱きついてきた。 俺は両手でガシッと愛花の両肩を掴み、その肩を掴んだまま思いきり前に押し出して愛花を振り払った。 「やめろよ!それだよ!今みたいにお前はその時々の感情だけで動いてる感じだから嫌なんだよ!」 それを言うと愛花は公園の土の上に座り込むようにガクッと崩れ落ちて 「私は龍一と別れるつもりはないよ」 と哀愁まみれた小声で俺に囁くように言った。 「お前はそのつもりでも俺は知らねぇよ。 とにかく俺の前に姿を二度とあらわすな。いいな?じゃあな。」 その言葉を残して俺はその場を足早に去った。少し離れてから後ろを振り返るとまだ愛花が下を向いてうつ向いている。 これで、いいんだ。もうこれ以上アイツには付き合えない。もうこの際だからアイツの携帯番号も消す。もう終わり終わったんだ。 【俺の前に二度と姿をあらわすな。】 【二度と姿をあらわすな。】 【姿をあらわすな。】 「じゃあ、すみませんお先に失礼します。」 「あぁお疲れ様。」 やっと今日のノルマの仕事が終わった。 左手に着けてる腕時計を見てみると時刻は 8時14分。いつもより一時間もこの会社に居てしまった。今日は早く帰って近くの店で借りた映画を観たかったのに今日になって急に栗原が休むからいつもの仕事量が二倍になっちまってこんなに遅くなったんだよ。 まぁいいやこんなこと考えても何も始まらないしさっさと帰ろう。 会社を出て10分、家の近くのコンビニで今晩の夕食になる弁当を購入してまた家に向かって歩き出した。そこから3分後住んでいるマンションの前に到着した。 そして自分の部屋番号の203号室目掛け駆け足で階段を登っていって203号室のドアの前に着いたがそのドアの前にまさかのものが貼り付けてあった。それは白色の長方形の封筒だ。 白色の封筒が黒いガムテープでバツ印で留めてある。 俺はそれを見た瞬間恐怖を覚えた。 この感覚を例えるなら自分のスマホに知らない番号から電話が掛かってきた感じに近い。 ドアの前に貼ってある白色の封筒をガムテープを剥がし自分の手に取ってまじまじと見た。いたって普通の封筒みたいだが、とりあえず家に入ってこれを開けよう。 早速家のドアを開け玄関前でカバンを降ろして靴を脱がずにその場で封筒を開けた。 封筒を開けると入っていたのは手紙だ。 その手紙を内容を見てみると 『お久しぶりです。 貴方にコンタクトを取るのは約3ヶ月振りかな?こんなに長い間待たせてごめんね。  貴方の出した問題がようやく分かったの。 貴方の言いたいことは私達は別れないけど私の姿は見たくないんでしょ?言わば遠距離恋愛みたいな感じだね! だから毎日こうやって私の書いた手紙貴方のドアの前に貼っとくからね。 それだけ書きたかったから今日貼りました。 じゃあまた明日ね。龍一!              愛花    』 と愛花らしい達筆な字で書かれていた。 コイツやっぱり頭イカれてる。前々からおかしいと思ってんだよな。あのときもそうだよ。 「はぁ…すげー怒られちゃったよ」 「どうしたの?龍一浮かない顔してるけど何かあったの?」 「えっ?あぁ会社でなちょっとミスしちゃってでもあんなに怒ることねぇと思うんだよな。俺入ったばっかりだし分からないことだらけなのになと思って」 「確かにそれは酷いね」 「はぁ〜ぁ足でも折って二度と会社に来なければいいのに」 「ねぇ龍一、その人の名前なんていうの?」 「えっーと確か桜庭さんだったかな?」 「サクラバ…サクラバ…ね。分かったよ」 ある休日のとき 「暑いなちょっとそこのコンビニ行ってアイス買おうよ」 「うん分かった。」 「えっ。マジかよ嫌だな〜」 「どうしたの?」 「えっほら前に話したじゃんこっぴどく怒られた話したでしょ?あれが俺に怒ってきた桜庭さんだよ。ちょっと顔会わしたくないから違うコンビニ行こう。」 「でもその前にやることあるから待って」 「何?」 次の瞬間愛花がカバンから出したのは恐らく警棒と呼ばれる物だと思う。 それを持って愛花が桜庭の所に向かって行く。俺はその行動をやめさせるように愛花の手を引っ張った。 「お前…何してんだよ!」 「えっ…だって龍一言ってたじゃん。足折れないかなってだからこの警棒でアイツの左足を思いきり何度も何度も殴るんだよ」 あぁもう思い出すだけでも怖くなる! 普通の人間はあんな行動しないからな。 確かあの後愛花を手を引っ張ったまま強引にコンビニから出したんだよな。 マジで頭ぶっ飛んでるよアイツ。 この手紙も勝手にアイツは俺の出した問題とか言って勘違いした答え出してるしな。 それにこっちから問題を出した覚えはないんだよな。 警棒持ってるのもなんで?って聞いたらいつ誰に襲われるかわからないでしょ?だから毎日鞄の中に入れてるよ!って自慢げな顔で言ってくるし。 まぁでもこの手紙見てる限り少なくとも俺には危害は無さそうだから放っておこうかな。 それより早く映画!弁当食いながら見よう! 「お疲れ様です。お先に失礼します。」 「はい、お疲れ様〜」 はぁ今日も仕事終わり〜昨日映画全部観てから寝るのが遅くなって今日一日ほとんどあくびばっかり出てたから眠い眠い。 今日は家に帰ったらシャワー浴びて早く寝よう。 そして今日もコンビニで弁当を買ってから自分の家の前に着くとまたドアの前に白色の封筒がガムテープで貼ってある。 俺はそれを右手で強引に引き裂くように取った。そしてそのまま家に入りそれをゴミ箱に捨てた。この日以降も毎日ドアに手紙の入った封筒を貼られては捨てるを繰り返してると家の中にあるものがあるのを発見した。 それを見つけたのは手紙を初めて捨てた日から約6日後経った日だ。 「よし、ネクタイもちゃんと締めたし髪の毛も…うん寝癖なし!じゃあ会社に行こうか…あっ!冷蔵庫に確か昨日飲みかけのコーラが入ってたよな、一気に飲んで気合でも入れようかな。」 洗面台から冷蔵庫に向かって冷蔵庫のドアを開くと目の前に見覚えのないものがあった。 それは黄色い二段重ね式の弁当箱。 俺はその弁当箱をまるで箱に入った爆弾を持つかのようにゆっくりと慎重に取り出した。 弁当箱を開けるとご飯、唐揚げなどのちゃんとしたおかず、ご飯が入っている。 その弁当箱に呆気を取られながら腕時計を見てみるともう出勤しないと遅刻してしまう時間になっている。 弁当箱に蓋をしてその弁当箱をまた冷蔵庫に戻してから急いで靴を履き家から飛び出るように出勤した。 「お‥お疲れ様です」 「あぁお疲れさん」 駄目だ今日は一日中あの弁当箱の事が気になってあんまり仕事に集中出来ずいつもより帰る時間が遅くなってしまった。 ただあの弁当箱を入れたのはやっぱりアイツ、愛花に違いない。でもなんでアイツが家に入れたかが問題なんだよな合鍵は渡した覚えは無いし。もしかしてドラマとかでよくある針金で開けたのか?とりあえず早く帰って今日も手紙を貼ってあるだろうからその手紙の内容を今日は捨てずに目を通そう。 会社を出て約10分自分の部屋のドアの前に着くとやっぱり今日も貼ってある。俺は貼ってある封筒を慎重に剥がして家の中に入り真っ先にソファに座りながら手紙を開いた。 『今日も炎天下でバリ暑かったね! あっそうそう昨日作ったお弁当どうだった? 愛情込めて作ったから美味しいと思うよ! また作るからその時まで楽しみに待っててね!じゃあまた明日ね!                  愛花』 やっぱり愛花か。 もう犯罪じゃないか?これ?勝手に人の家に入って不法侵入だし、ストーカー行為みたいなのしてるし。これ以上俺を苦しめるなら警察に通報してやる。今日もこれ以上起きててもイライラするだけだからベッドに入って寝よう。 「…、…あっもしもしあの〜佐藤さんいらっしゃいますか?私そちらで働いている渡辺龍一というものなんですけど」 「佐藤さん、ですねちょっとお待ちください」 「…、…はい。代わりました佐藤です。」 「あっもしもし、渡辺です。あの今日なんですけどちょっと大事な予定が入ってしまってお休みをしたいんですけど…」 「うん、どんな予定なのそれ」 「どうしても言わないとダメですか?」 「まぁ一応ね」 「ある人を殺します。」 「えっ?」 「それでは失礼します。今までお世話になりました」 これで準備OK。もう後戻りなんかするつもりは更々無い。後はアイツが来るのを待つだけ。 『カチッ』ドアを開ける音が玄関でした。 『ドンドンドン』玄関から響く足音がだんだんこっちに向かってくる。 『ストンッ』愛花がテーブルにカバンを置く音が聞こえた瞬間俺は隠れていたトイレから飛び出しその飛び出した勢いのまま愛花の胸のど真ん中を包丁で突き刺した。 「なんで…うっ…」 まだこの女喋ろうとしやがる。 もうこの女の声なんか聞きたくない早く逝け そう思った俺は倒れた愛花の首を自分の両手で強く…強く握りしめた。 愛花はみるみるうちに弱っていきやがて顔色が白くなっていった。 これで俺は自由だ、もうこれでコイツから完全開放された! そう思ったのも束の間家の外からパトカーの音が聴こえてくるそれもだんだん音が大きくなって俺の家に向かってくる感じた。  多分通報したのは会社だろうな。 まぁいいどっちにしろ隠してもバレる運命なのだろうから。来るなら来い、逮捕するなら逮捕しろ、刑務所入れるなら入れろ。 俺は逃げも隠れもしない。 「これから取り調べを始めさせてもらいます。まずなんで貴方は橋本愛花さんを殺したんですか?」 「簡単なこと、あんたらが悪いんだよ」 「えっ?どういうことですか?」 「あんたらは知らないだろうね俺がアイツから付きまとわれてるのを」 「えっ?」 「その反応を見る限りやっぱり知らねぇみたいだなそりゃそうか、この事を近くの警察署に相談しても軽く流されて役にたたねぇアドバイスしか貰えなかったからな」 「…。」 「だから俺が殺った。もう限界だったんだよ。最初は良かったよ手紙だけだったから、でもだんだんエスカレートしていったんだよ。勝手に家に入って人の冷蔵庫に弁当箱入れるわ、カーテンの柄はなんか知らねぇ水玉模様に変えてくれるわ、歯ブラシはいつも使ってるやつから新しいのに変えるわ、そういう細かいのも毎回仕事から帰ってくると何かしら無くなって新しいのがあるんだよ。あんたらに分かるか?この気持ち?どんどん俺が知ってる家が無くなっていくんだぞ。これが2ヶ月も続くんだぞ?もうアイツから監視されてるようでたまんないんだよ。しかもアイツ俺の会社に連絡とってるやつが居たんだよ。アイツはそいつの情報のおかげで俺が家に居ない時間を毎回掴んでたんだ。 「ちょっと待ってくだ…」 「うるせぇ!!!!!まだ俺が喋ってんだよ!人の話を最後まで聞け。今話した全てが俺がアイツを、橋本愛花を殺した理由だ。あんたらが最初から俺の相談を真摯に聞いてればこんなことにはならなかったよだからお前らが悪い。あっ、おまけと言っちゃなんだけど愛花を殺した当日の俺の動き教えてやるよ。 まず普通に朝起きてから会社に休みの連絡を入れた。あんたらが俺の所に来て逮捕したのもうちの会社から通報受けたからだろ?俺が休む理由に殺しますって言ったから。 そしてその次に俺は会社居る愛花と繋がってる栗原に連絡を取り愛花にもう俺は仕事場に居ると連絡しろとメールで送った。 最初は驚いたよまさか栗原がアイツと繋がってたとは思わなかったよ。ある日だよある日俺が会社から出て家に帰ろうとしたんだけど会社のデスクに自分の家の鍵置いてきちゃったからそのデスク戻ろうとしてる途中の廊下でトイレから出てきた栗原を見つけたから後ろから驚かしてやろうとしたんだよ。 そんで栗原の後を追いかけてるとヤツの携帯に電話がかかってきて栗原が電話に出たんだよ。そして栗原は電話を耳にあてたまま何処に行ったと思うよ?正解は俺のデスクだよ 栗原は俺のデスクに行ってデスクの上にある卓上カレンダーで俺の出勤日を伝えてたんだよ。俺は卓上カレンダーに出勤日を毎回書いてたから。忘れないように。 それでもしかしたら電話の相手は愛花か?と思ったんだそれで殺す前日に栗原と昼飯食いに行こうぜって言って栗原を連れ出した。勿論はなから飯食うなんて思ってないから人目のつかないビルの路地裏に連れて行きそこで栗原に聞いたんだ、お前もしかして橋本愛花と連絡取ってるか?って 栗原は誰ですかそれ?って返してきたけど 俺はその答えで栗原が愛花と繋がってるのを確信した。 栗原は誰ですかそれって言ったあと首の後ろを手で撫でるように触っていたんだ。これは栗原が嘘を付いてるときにやる行動なんだよ。栗原の面倒を長年見てるからこそ分かったんだ。 それで俺は栗原の胸元を掴み言った。 お前嘘ついてんだろ、俺はお前の4年も先輩だ先輩からの命令だ本当の事を言え。 先輩の命令をきけねぇとは言わないよな? ってそしたらヤツは全部洗いざらい吐いてくれたよ。 栗原は愛花の高校の時のクラスメート。 俺が愛花と別れてから約3ヶ月後栗原に連絡があったみたいだそのとき愛花は俺の出勤日する日にちとその時間帯を教えてくれと言った。でも栗原はちょっと無理と後を濁したみたいだ。でも愛花はどうしても知りたいからお願いお金払うからと言うと栗原は食いついて1ヶ月ごとに二万も貰えてたんだ。それに愛花は俺の知らない間に俺の部屋の合鍵を作ってたみたいだ。だから家にもすんなり入れたんだ。ちなみに愛花は俺と付き合ってるときから俺の会社に栗原が居ることを知ってたみたいだ。 それを知った俺はもう愛花に限界だったから殺すチャンスだと思い栗原に明日俺がお前にメールを送るからその内容を見て愛花に連絡しろと言って当日。栗原に予定したとおりにメールしてその1時間後遂に愛花が家に来た。俺は一時間もトイレに隠れて殺すチャンスを伺ってた。そして愛花がテーブルにカバンを置いた時にトイレから飛び出して愛花を刺した。これが橋本愛花殺人事件の真相だ」
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