プロローグ 

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 俺の家には特にこれといっていかがわしい物は置いていないし、パソコンには当然パスワードがかけてある。  そして、彼女には姉さん経由で既に合鍵が渡っている。そうなれば俺の選択肢はただ一つ。  ――もうこの子を家に入れてお茶を出してから出かけよう。そして、今日だけとは言わずに連休中は友達の家に泊めてもらう。 「真希ちゃん、いらっしゃい。外暑かったでしょ……さ、入って」  俺は演技派らしいから、さっきまであったことなんて微塵も感じさせないよう細心の注意を払って言った。 「あなた、誰ですか? こんな気持ちが悪い人は身内にはいないはずなのだけれど」 ――キモいって言われるよりも気持ちが悪いって言われる方が傷つくんだなぁ。そう現実逃避するくらいには傷ついた。  許せん。誰だよ俺のこと演技派とか言った奴。微塵(みじん)も感じさせないどころかめっちゃ怒ってんじゃん。  なまじ見た目は可愛いから怒っているときの身に纏う雰囲気には圧倒される。うん、すげぇ怖い。  あれだ、ジェームズ・マティスとプリクラ撮ったって言われても信じられるくらいには怖い。
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