② いかなるときも小鳥遊玲は(が)怒られる

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「いやー満腹……もうこれ以上入んないかな? 入んないね……うん」 「……玲。君はなにを言ってるんだい?」 「ごめん、朝日。俺……今日夕飯抜くよ。流石に作ってもらったのを残すのは美咲ちゃんに悪いし。久しぶりの外食だからって慣れないことはするもんじゃないね。今まで通り替え玉しないでおくべきだった」 『つまりきみはそんなやつなんだな』と言いたげに瞳の温度が冷めていく朝日に怖気を覚えつつも、見せつけるように腹を数回叩いて見せると、くぅという間抜けな音。 「…………」 「…………」  数秒沈黙した後、 「ほら、行くよ。女性陣はもう駅前で待ってるってさ」  柔らかな口調に反し、凍てついた視線を向けてきた朝日に俺は観念した。 「……はい」  半ば連行されるようにしてYデッキに着くと、二人は花壇枠のベンチに座っていた。 「あ、やっと来た。そうだ、玲さん。夕飯何が食べたいですか? えっと、なんでもいいとかはダメです」  譲歩しているようで単に思考放棄しているだけのワンフレーズは当然のように封じられた。  使い古されてるしそりゃ禁止フレーズになるよな。 「ううん。ここ最近食べてないしカレーが食べたいかな」  流石にパッケージのレシピ通り作ればなんとかなるだろう。  それに、仮に失敗するとしても多少汁っぽくなるくらいで食えないことはないはず。
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