② いかなるときも小鳥遊玲は(が)怒られる

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 二人がキッチンに姿を消してから、待つこと一時間。  その間、手持ち無沙汰になり携帯をぽちぽちと弄る。うん、やっぱり通おうかなスマホ教室。  自身の機械音痴さに辟易していると、エプロン姿の真希ちゃんがテーブルに食器を並べた。  その表情には疲労感が滲み出ており、キッチンでのやりとりがなんとなく想像できる。 「あ、カレー出来ましたよ」  鍋蓋は閉じられており中がどうなっているか見当もつかないが、少なくともいつもほど嫌な予感はしない。  まあ、流石にいつものよりかはマシか。  つい先日出されたのは、どろりとした黒い液体と小指の先ほどのジャガイモ。  そして、黒焦げのおそらく肉とニンジンだったであろう物体。  正直ルーの時点で既に禍々しく、とてもじゃないが食えるものには見えなかった。……たぶん宇治田もお代わりしないんじゃないだろうか。 「わ、わーカレーだ。久しぶりに食べるから楽しみだな……」  若干声が上擦りながらも、朝日は夕飯を楽しみにしていたアピールをする。  が、それを見る美咲ちゃんの瞳は家畜を見るようなもので、おおよそ家族に向けるものではなかった。
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