② いかなるときも小鳥遊玲は(が)怒られる

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 てことは問題は米か。まぁ、米がビチャビチャしててもカレーだし何とかなるだろう。  そう思いつつ炊飯器をパカッと開けると、予想に反し艶のある白飯。 「……」  朝日の分も皿によそい席に着くと驚愕に満ちた視線と共にポツリと。 「……俺の十六年は何だったんだろ」 「本当だよ」  真希ちゃん一人で、しかもこの短時間でここまで矯正できたと言うのに、こいつは今まで何をやってたんだ。  いや、俺も「うまい!」と言ってたし同罪か。 「まぁ、美味そうだしいっか」 「それもそうだな」  最後の晩餐を回避した喜びを噛み締めていると美咲ちゃんが胸を張り。 「どうだお兄ちゃん! 私もやればできるでしょ」 「いや、びっくりした。今日はジャガイモ大きいから真希ちゃんが作ったのかと」 「え、野菜は殆ど真希ちゃんに切ってもらったけど……なんで分かったの?」 「……いや、なんとなくいつもと違う気がしたから」 「……ふぅん」  美咲ちゃんに睨まれている朝日を放置し一口。 「うまい……なんか家で作るカレーよりコクがあるというか。とにかく美味い」  食戟(しょくげき)のソーマだったらあられもない格好になっているだろう。  男のサービスシーンに需要はないからそんなことは起こり得ないのだが、それくらいには美味かった。
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