② いかなるときも小鳥遊玲は(が)怒られる

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「あ、玲さん気づきました? 実は隠し味にチョコが入ってるんですよ」 「へー、チョコ入れるとこんなに変わるのか」  いつもは全然隠せてない隠し味が隠れるだけでこんなに変わるものなのか。 「つ、遂に美咲が隠し味を隠したぞ。……ここまで長かった」  朝日がよよよと泣き真似をするが、たしかに実験台その一としてはこの成長に涙を堪えられないだろう。  あえて言うまでもなくその二は俺だ。 「む、失礼な。いつも隠せてたでしょ。……ですよね、玲さん」 「あ、あはは」  そう言って俺の方を向いたが、横でプイプイ言ってる朝日と違い、俺は愛想笑いを浮かべるくらいしかできなかった。 「もう、玲さんまで揶揄わないでくださいよ……」  俺の反応に不満だったのか美咲ちゃんはむすっと膨れ。 「大丈夫よ美咲さん……練習すれば人並みには出来るようになるはずだから」  言いながら、真希ちゃんが「本当にこの子は料理ができるようになるのかしら」という顔をする。 「そ、そうだよね! 練習すればなんとかなるよね!」  真希ちゃんは手をブンブン振られながら、こちらに微笑むと 「それに、幸い毒味(あじみ)役してくれる人が二人もいるのだし……あとは時間がなんとかしてくれるわ」 ……もしかして、それって俺も含まれてる?
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