② いかなるときも小鳥遊玲は(が)怒られる

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「あの、玲さん。その……またご飯食べに来てくれますか?」  美咲ちゃんが頬を紅く染め、上目遣いでこちらを見つめるが、その隣で微笑んでいる真希ちゃんが怖くて正直それどころではない。  だって、なんか背中に修羅見えてるし。心なしかゴゴゴゴ……なんてオノマトペが聞こえる気さえした。    どう答えたものかと横を見れば、朝日は「うわ、なんてタイミングでこっち見るんだ」的な顔をしてやがった。この惨状はお前が放置してた結果だぞ。 「……玲さん?」 「え!? あー、うん、いいよ。……まあ、さすがに毎回って訳にはいかないけど。それでもよかったら」  我ながらよく舌が回る。回し車に入ったハムスターかよ。 「ほ、ほんとですか!」  俺の返事に安心したのか、美咲ちゃんはにこりと微笑んだ。 ※ ※ ※  夕食を終え五分後。すっかり機嫌が治った美咲ちゃんはいそいそと冷蔵庫からバットを取り出した。 「おっ黒糖かんだ! 懐かしい。小学生の頃よく給食でお代わりじゃんけんしたなぁ」 「なあ、朝日。それって……」 「あれ、もしかして玲の小学校では出なかった?」 「いや、出たけど……」 「そりゃそっか。たしか黒糖かん、揚げパン、フルーツポンチあたりは人気だったし」  朝日はそう言って取り分けられた皿に颯爽と手を伸ばした。
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