② いかなるときも小鳥遊玲は(が)怒られる

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 朝日は上機嫌に黒糖かんを口に運ぶと「ゔっ」と小さく呻めき、机に突っ伏すとそのまま沈黙した。……馬鹿め。  カレーが美味かったから油断したんだろうが、これも真希ちゃんと作ったとは限らない。  そして、寒天が固まるまでにかかる時間を考えれば当然避けられるはずの悲劇だった。 「はい、玲さん……どうぞ」  そう言って差し出された皿には、さっき見た劇物。そして、その上にきな粉と黒蜜がかけられている。  ……おかしいな。たしかに真希ちゃんは目の前で朝日が潰れたのを見ていた。  だから当然これが食品から錬成されたバイオ兵器だってことも理解してるはず。 「……あ、ありがとう。甘いの好きだから嬉しいナ☆」  さすがに死にはしないだろうが、さっきからピクリとも動かない朝日を見ると躊躇してしまう。  さっきから「寝るなら部屋で寝なよ」と美咲ちゃんが起こそうとしてるが、一向に起きる気配がない。  終身不名誉シスコンのあいつが妹の声で起きないなんて相当なことだ。  つーかこれであいつ死んだら終身不名誉シスコンと終身不名誉童貞の二冠になるのか。  なんてさっきまでの鬱憤を晴らすように、朝日のことを内心ディスっていると。 「そうだ、折角ですし『あーん』しましょうか?」
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