手紙②

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手紙②

愛と憎しみの苦しみから逃れるために。 私は、アブサンに手を出した。 アブサン。 ニガヨモギのリキュール。 幻覚や錯乱を生じさせて、多数の中毒者や犯罪者を出した。 錬金術師が作ったと言われている「緑の魔酒」。 「緑の妖精」。 私はアブサンを飲んだ。 毎日飲んだ。 浴びるように飲んだ。 痛くても飲んだ。 気持ち悪くても飲んだ。 吐いても飲んだ。 何本も空けた。 何本も何本も空けた。 それでも。 苦しみは無くならなかった。 痛みは無くならなかった。 愛も憎しみも消えなかった。 むしろ。 日に日に増していった。 君が頭から離れなくなった。 報われない愛が私を蝕んだ。 地獄だった。 この苦しみが一生続くくらいなら。 もう。 いっそ。 死んでしまいたいと。 思った。
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