手紙①

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手紙①

愛する人 阿武男(あぶお)くんへ。 君がこの手紙を読んでいるということは。 私はもうこの世にいないのだろう。 事故か病気か自殺か殺人かわからないが。 この手紙は。 私の死後。 君に届くようになっている。 阿武男くん。 愛する阿武男くん。 高校で君と初めて出会った時から。 私は君が好きだった。 ずっと。 ずっと。 今でも好きだ。 愛している。 でも。 君は私を拒んだね。 男同士で愛し合っても幸せになれない、と君は言って。 私を愛してくれなかった。 当然だ。 私は男で。 君も男で。 私は教師で。 君は生徒で。 歳も干支一回り以上離れているのだから。 当然だ。 ましてや女のように愛せだなんて。 君が拒むのも無理はない。 でも。 でも私は。 それが嫌だった。 とても嫌だった。 私の愛を受け入れない君が。 私の愛を拒む君が。 嫌いだった。 とても嫌いだった。 とてもとても嫌いだった。 好きなのに嫌いだった。 愛しているのに憎かった。 相反する感情に耐えられる程。 私は。 強くなかった。
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