手紙④

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手紙④

アブサンが私の首を絞めるんだ。 今も。 「僕を見て」 「僕を愛して」 と。 かつて彼に縋った私のように。 乞うのだよ。 アブサンが。 緑の妖精が。 ツヨンの幻覚が。 愛する君と瓜二つの彼が。 ふふ。 酒のアブサンを飲まなくても。 眠っていても。 現(うつつ)となって。 私に。 縋って。 はは。 ああ。 アブサンは。 緑の妖精は。 知っていたのだ。 どんなに愛し合っても。 私が愛するのは阿武男くんであって。 アブサンではないことを。 私も知っていたのだ。 私を愛するのはアブサンであって。 阿武男くんではないことを。 でも。 私は。 弱い私は。 夢をみられず。 かといって現を受け入れられず。 だから。 私は。 アブサンは。 もう。 これ以上は。 無理だと。 限界だと。 悟って。 死を。 だから。 もう 終わりに。 ああ。 阿武男くん。 もし君がこの手紙を読んで。 少しでも。 私を憐れだと思ったのなら。 怖いと思ったのなら。 どうか。 私の墓に。 酒のアブサンを供えてくれないだろうか。 私は愚かな男だから。 もしかしたら。 死後の私が。 君に悪さをするかもしれないのだ。 生きている間は抑えられていた君への愛が。 抑えられなくなって。 呪いとなって。 君を殺すかもしれないのだ。 だから。 どうか。 墓に。 アブサンを。 アブサンがあれば。 きっと。 私が私を殺すことはあっても。 私が君を殺すことはないだろうから。 ね。 阿武男くん。 君のこれからに幸多からんことを。 愛しているよ。 君の先生の。 在男(あるお)より。
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