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「俺にとって、唯一無二の存在ってこと」
俺がそう言うと、光希は「もっとわかんない」と頬を膨らませた。
「お前はまだわからなくていーの!」
「えー!?だからー、いっぱいいっぱい大好きってこと?違う?」
「まぁ、そーゆーことだよ」
俺の返事にようやく納得がいった様子の光希は、嬉しそうに顔を綻ばせた。
「ふぅーん」
「なんだよ」
「これ、お母さんに渡してこよーっと!」
「あっバカ!やめろ」
光希はさっきの仕返しとばかりに、俺の制止も聞かずに便箋片手に椅子から飛び降りた。
和室の襖が勢いよく開けられて、パシンッと軽い音を立てる。
「ったく……襖開けるときは静かにって、いつも言ってんだろ」
「ごめんなさぁい」
肩を竦める光希の頭に手を置いて、今度は優しく撫でてやる。光希はくしゃりと顔を歪めて、擽ったそうに俺にすり寄った。
「手紙貸して、俺が渡すからさ。
こういうのは自分で直接渡さなきゃ、意味ねーんだよ」
光希から便箋を受けとると、
俺はそれを、仏壇に飾ってある早希の写真の前に置いた。
早希に宛てた、初めてのラブレター。
どうせなら、
生きてるときに一度くらい書いてやればよかった。
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