“愛してる”を君に捧ぐ

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『こうせいくんへ またいっしょにおにごっこしようね。 ほいくえんでいっぱいあそぼうね。 だいすきだよ。 みつきより』 覚えたての平仮名で、辛うじてそう読める。 「ほーう……だいすきだよ、ですか」 「カッコいいんだよ!コウセイくん。 縄跳びも上手だし、かけっこも一番早いんだよ!」 手紙を読まれて開き直ったのか、光希は丸い瞳をキラキラとさせてコウセイくん自慢を始めた。 スポーツができる男がモテるのは世の常。 コウセイは、どうやらクラス一の人気者らしい。 「ラブレターねぇ。5歳児には早いんじゃねぇの」 「ミツキもうすぐ6歳だし! ……って、らぶれたぁ、ってなぁに?」 「あ、何、お前ラブレター知らないか。 ラブレターっつーのは、好きな子に宛てて書く手紙のことだよ。正に、こーゆーの」 俺が光希の手紙をヒラヒラと靡かせると、 光希はそれを俺の手から奪い返して唇を尖らせた。 「お父さんも書けばいいじゃん!らぶれたぁ」 「俺?誰にだよ」 「お母さんに決まってるでしょ!」 「あぁ、早希(サキ)ね」 「ほらお父さん、ミツキの便箋あげるからさぁ」 俺は曖昧に相槌を打って、冷蔵庫からビールを取り出した。 ……嫁にラブレター? こっ恥ずかしくて書けるか、そんなもん。 キンキンに冷えたビールを一気に煽ると、光希は呆れた表情で俺を見上げた。 「飲み過ぎないでよ」 「うわ。お前のその口調、早希ソックリ」 「そりゃお母さんの子だもん」 そうだよなぁ…… 俺は、改めて光希を盗み見た。 数年前までどこもかしこも丸っこかった光希。 ここ一、二年ほどで急に引き締まってきて、より一層母親に似てきたと思う。 顔も、それこそ言動も。
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