“愛してる”を君に捧ぐ

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風呂から上がって、タオルで頭を拭きながらリビングに戻ると、 もうすぐ6歳になる娘の光希(ミツキ)が、なにやら真剣に机にかじりついていた。 ぶつぶつと独り言を呟いて、一体何してんだ? 俺は何の気なしに、光希の手元を覗き込む。 すると俺の気配に気づいた光希は、驚いたように顔を上げて、それからすぐにガバッと机に突っ伏した。 「やーだぁ!お父さん見ないでよ、ヘンタイ!!」 「はぁっ!?どこで覚えてきた、そんな言葉」 「クラスのソウタくんが言ってた」 おいこら、ソウタ。 うちの娘に変なこと吹き込むんじゃねぇ! 俺は顔も知らない光希のクラスメイトに、頭の中でゲンコツを一発お見舞いする。 どうせ言葉の意味もわかっちゃいないだろうが。 最近の子供っつーのは、妙にませてるから厄介だ。 机に伏せた光希の二の腕から、便箋のようなものが覗いて、俺はそれを指差した。 「なに、手紙?」 「そう」 「誰に」 「……コウセイくん」 今度はコウセイかよ。 光希の保育園のクラス名簿なんて、年長になったときに一度目を通したきり。 ましてや男の子の名前なんて、一人も覚えちゃいない。 隠すほどの内容って、なんだよ。 俺は無性にその手紙が気になって、光希に「見せて」と手を伸ばした。 だけど「ヤダ!」と速攻で断られる。 隠されれば隠されるほど気になるってもんで、俺は大人げなくも光希の隙だらけの脇腹をこしょこしょと擽ってやった。 「ひゃはははは!ちょっ、ずるい!あっ」 「いいじゃねーか、別に減るもんじゃあるまいし」 自分の娘だからセーフだけど(セーフだよな?)、余所でやったら完全にセクハラ行為&発言だ。 まぁ、そんなことは置いといて。 「読んじゃだめー!」と怒る光希の頭をぐりぐりと撫で回しながら、俺は取り上げた手紙に視線を落とした。
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