紡ぐもの 織り成すもの / 彗星の奇蹟 10

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頭の中が真っ白になって目眩がした。 「…もしもし?」 顔の前で娘が手を振っている。 「あ、ああ。すまない。」 「あのぉ。若奥様のお知り合いですか?」 「奈緒は?彼女は今何処に!?」 殆どキスの距離にずいっと近づいたから、彼女は怯んで身を引いた。 「何処って…お屋敷ですけど。」 “どこって、家に決まってるでしょ”…前にも似たようなセリフを聞いたな。 僕は馬鹿か。 奈緒が書き残した住所を口にした。もうすっかり暗記してしまっている。 娘が頷いた。 彼女の名前は名波志乃。藤堂家の使用人を務める。 女性は藤堂 渚。例の少佐の姉だという。
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