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頭の中が真っ白になって目眩がした。
「…もしもし?」
顔の前で娘が手を振っている。
「あ、ああ。すまない。」
「あのぉ。若奥様のお知り合いですか?」
「奈緒は?彼女は今何処に!?」
殆どキスの距離にずいっと近づいたから、彼女は怯んで身を引いた。
「何処って…お屋敷ですけど。」
“どこって、家に決まってるでしょ”…前にも似たようなセリフを聞いたな。
僕は馬鹿か。
奈緒が書き残した住所を口にした。もうすっかり暗記してしまっている。
娘が頷いた。
彼女の名前は名波志乃。藤堂家の使用人を務める。
女性は藤堂 渚。例の少佐の姉だという。
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