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部屋に入るとまず目に入る大きなベッド。
準備していたようにどくんっと弾けてしまうほど心臓が音をたてた。
固まった指を溶かすようにゆっくりと握り込められていた手が離される。
その手は後ろ頭を掻き、首を擦るように添えられたまま藤木が私を振り返った。
「連れて来といてなんだけど、何もしないから」
また初めて見る顔。
お酒のせいか照れのせいか、うっすらと目元を赤くした藤木がぼそりと言う。
「嫌なことはしない」
……嫌じゃないと言えば触れてくれるの。
似合わないとわかっていてもたまには、……好きな人には素直で可愛い女になりたい。
そう思うのに、言葉が出てこない。
藤木になら何をされてもいいと思うのに。
その思いは身体を震わせるほどなのに。
「………して」
「え?」
部屋を落ち着き無く見渡していた藤木の背中に顔を寄せた。
顔を見られていなければ言える気がした。
「嫌なら、嫌って言うから………して」
「……どういう意味かちゃんとわかってる?」
低く、でも確かめるように尋ねる声に背中に顔をつけたまま頷いた。
ゆっくりと振り返った藤木が突然屈む。
膝裏に腕を入れられたと思った次の瞬間には抱き上げられていた。
空中に浮く心許なさに慌てて藤木にしがみついた。
「ぎゃっ!!」
「ぎゃって。身長の割には軽いんじゃない?体重何キロ?」
「い、言わない!」
ふふっと笑った藤木はそのままベッドに向かう。
触れる身体が熱い。
その熱に包まれたまま壊れ物のようにそうっとベッドに寝かされパンプスを脱がされた。
靴を脱がされるなんて初めてだ。
足首に触れる手がこれから私の身体にどう触れるのか、想像するだけで身体の奥がじわりと潤んだ。
靴を脱がされた脚が少し持ち上げられ、甲にチュと音を立てるキスをされた。
「…っ、藤木、やだ…」
「足の爪も綺麗にしてるんだな」
長い指が親指を撫でる。
薄い肌色の膜の上から指、甲を撫で、その手は足首の凹みを楽しむようになぞり上がる。
「ストッキング、脱がせていい?」
その声色に背筋がぞくりとした。
いつもより低い声は甘く誘うようで、下唇だけ少し厚い口から漏れる吐息は同じように私の息も上げる。
「じ、自分でする」
「ダメ。…恥ずかしいなら目閉じようか」
「え」
目の前が暗くなる。
触れ合えると思っていなかった唇が重なっていた。
重ねるだけのキスをしながら、起こしていた上半身が背中を支える腕に誘導され縫い付けられるようにシーツに沈められた。
大きな手が頰を包む。
下唇を食むようにされた後上唇に舌が触れた。
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