女の子になーれー!

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女の子になーれー!

「ちょっと、おじいさん大丈夫?!」 ケイスケは高校の帰りに、公園で倒れていた知らないおじいさんに話しかけた。 「うう……。おでん食わせてくれ……。」 「えっ、おでん?」 「腹減った……。」 「お腹がすいてるのね!」 ケイスケは体は男で、心は女の高校生だ。 スカートを履いて学校生活を送るために、制服のない高校に入った。 ケイスケは家に帰って鍋の中のおでんをタッパーに入れた。 「ちょうど昨日の残りがあってよかったわ。」 急いで公園に戻った。 「はい、おじいさん。おでんよ。」 ケイスケはおじいさんを起こして、串に刺さったおでんを渡した。 「おお、うまそうじゃな。」 モグモグ おじいさんはおでんを一本食べた。 「うまい!」 おじいさんは目を見開いて感激した。 「お口に合ってよかったわ。」 「ありがとう。心優しき少年よ。」 「ムッ。どうして私が男だって分かったのよ。スカート履いてるのに。」 「伊達に美少年好きを千年もやっとらんわい。女の格好をしても男だということは分かるぞよ。」 「千年? そんなに生きてるの?」 「ああ、わしは魔法使いじゃ。」 「魔法使いのおじいさん……。」 「おでんをくれたお礼に何か願いを叶えてやろう。何でも言ってみるがよい。」 「女になりたいわ。私ね、同じクラスの望月君が好きなの。告白したらね『男は嫌いだ』って言われてフラレちゃったのよ。」 「ふぉっふぉっふぉ。こっぴどくフラレたのう。」 「望月君はね、マッチョでかっこいいの。胸筋もすごくてね。あのたくましい胸筋に顔をうずめるのが私の夢なのよ。女になったら振り向いてもらえるかしら?」 「ふぉっふぉっふぉ。女になるくらい、お安いご用じゃ。」 「なれるのね!」 「さようじゃ。今度の満月の夜に効く魔法を教えよう。満月との合言葉を決めるのじゃ。」 「合言葉?」 「変身の呪文じゃ。適当でいいから考えるのじゃ。」 「んーと、そうねえ。『お月さま! 私を女の子にしてください!』でいい?」 「普通じゃのう。つまらんのう。」 「んー。じゃあ、『お月さまー! 月明かりでムンムンムン。女の子になーれー!』」 「ま、そんな感じでええじゃろ。この串に刺さったおでんを持ちながら満月に向かって言うのじゃよ。効果倍増の変身アイテムじゃ。」 「おでんが変身ステッキなのね。分かったわ。」 「ふぉっふぉっふぉ。健闘を祈るぞよ。」 ☆ 満月の夜、ケイスケは大好きな望月君を公園へ呼び出した。 「よお、こないだは悪かったな。ひどいこと言って。」 「あら、謝ってくれるのね。ありがとう。」 「で、今日は何の用だよ。」 「フフ。あのね、望月君に見てほしいの。」 「え?」 ケイスケは串刺しのおでんを満月にかざした。 「お月さまー! 月明かりでムンムンムン! 女の子になーれー!」 「何言ってんだ?」 パァァァァ 月の光がおでんに集まる。 「ウウッ、まぶしいッ!」 望月君は目がくらんで倒れた。 「胸が出てきたわ。Bカップくらいあるかしら。下の方は………。」 ケイスケは自分のパンツの中を見た。 「すごい! 本当に女になってるッ!」 ケイスケは倒れている望月君を起こす。 「ねえねえ! 望月君!」 「ウウ……。」 望月君は起きない。 「ハッ。今がチャンスかも。憧れの望月君の胸筋を堪能するわ。」 ケイスケは望月君の胸に顔をうずめた。 「ムッ、意外に柔らかいのね。」 スリスリ ポヨンポヨン 「思っていたのと違うわ。」 「ウウッ……。何してるんだ?」 「アッ、望月君。なんか声高くなってない? ハッ、まさか……。」 ポンポン ケイスケは望月君の股間をたたいた。 「おい、何するんだ。」 「ないわ!」 ポンポン ポンポン 再び望月君の股間を叩く。 「やっぱりない。」 「ええっ」 望月君も自らの股間を確認した。 「ない!」 「なんてこと! 魔法が望月君にもかかっちゃったのね!」 「どういうことだ?」 「女になっちゃう魔法よ。私と望月君にかかったのよ!」 「なんだって。そうだ、俺ケイスケに言いたいことがあったんだ。」 「なあに?」 「俺、あれからBLを勉強したんだ。BL漫画にBL小説を読みまくった。それで心を入れ替えた。付き合ってくれ。」 「……ごめんなさい。」 「えっ、なんで。」 「私はたくましい男が好きなの。女には興味ないわ。」 「そんなあ。俺が男でも女でも植物でもロボットでも愛してくれるんじゃないのか?」 「そういうBL読んだのね……。でも違うわ。私は女よ。男が好きなの。BLはジャンル違いだわ。」 「なんてこった。」 おしまい
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