166粒目:夢志

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 私は、自分の作品が誰かの目に触れる、その環境が欲しかっただけなのではないか。  だから最初は、書籍化やらメディア化やらを目指していたけれど、そんなことをしなくても、見てくれる人がいるこの環境で十分だと思ってしまっているんじゃないか。  でもそれは前述の通り、若さというレッテルがあったり、瞬間的な目新しさがあるから、気にかけて頂いているだけのこと。  いずれボロは出る。いや……もう既に出始めていると思った方がいい。  辛うじて作品としての印象がある『拙作くん』があるのなら、なんとかしなくてはならない。 「『拙作くん』は……なんとかしてやりたいんですけどね……結構、アイデアとしても、気に入っているというか……あの作品は、やっぱり、認められない悲しさから生まれたものですから!」 「まあ、そういう作品は結構ありますからねぇ」  いい加減、仕事も創作も、ちゃんと舵切りしなくちゃいけなくなってきたようです。 (この暖かい場所から追い出されないように、暖かい場所を失わないように……)  創作に対する目標が、やっと出来たようです。  結局私を掻き立てるのは、焦燥心のようでした。
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