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173粒目:落選
いよいよ島根帰省まで1ヶ月を切り、まだ見ぬ出会いにわくわくするあまり、仕事にも手が付かない愚か者。
しかし、毎日が心躍ることばかりでもなく。
9月は落ち着かないひと月でした。月末に、とある短編の発表を控えていたのです。
何度も公式サイトを確認し、家を出る前と帰ってきた時に、必ずポストを開けるほどでした。
普段、公募の発表を待つ時は、こういうことはせず、出したらすぐに切り替えて他の作品に着手し、忘れた頃に「だめだったか〜」というふうにしています。いずれ襲い来るであろう絶望を、事前に希釈しているのです。
しかし今回の公募には、どうしてもそわそわしてしまう理由がありました。
小泉八雲没後120周年記念事業として、『湖都松江』という雑誌で、新作怪談を募集。
出さないわけがありませんでした。ここで引っかかってくれれば、これを最後の作品にしたっていいと、本気で思っていました。
結果が出たのは、10月1日でした。
最後の1週間辺りはもう、「ここまで音沙汰ないんじゃ、やっぱりだめだったんだな」「いや、発刊のタイミングで連絡があるのかもしれない」という気持ちがひっきりなしに行き来していました。けれどやっぱり、前者がやや優勢でした。
公式サイトを見ると、選ばれた8編は、タイトルと名前と共に掲載されていました。やっぱり、私の名前はないのでした。
まあまあまあ、もういつものことだし、今更悲しむ体力もないよ。まして短編だし、味変して別の公募出せばいいや。いつもだったらそれくらいです。
しかし今回は違うのです。
(ああ……これは多分、一生引きずるな)
その巻の特集には、彼の名前がありました。
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