173粒目:落選

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 小泉八雲節目の記念事業、故郷松江の雑誌、そして怪談の公募となれば、きっと朗読公演の宣伝も兼ねる。もしかすると、応募概要に書かれていないだけで、審査員の一人なのかもしれない。この公募の存在を知った時、真っ先に思い浮かんだことでした。  たとえ公募に関わりがなくても、松江の雑誌ということで、彼の目につくことができるかもしれない、またとないチャンスでした。  サイン会がなんだ。ツーショがなんだ。私の本当の願いは、私にしかできないことで彼に認めてもらうことではなかったか。  ああ、やっぱり自分は、大事な大事な局面を、本当に物にできない人間だな。悲しいというより呆れました。「詰めが甘い」自分の名前の次によく聞く言葉でした。  唯一の救いは、特集の内容が、思い出の喫茶店の話らしいことでした。  でも、やっぱり神様っているんだなあ、と思わされます。今まで結果発表から逃げてきた私ですが、佐野史郎と書かれた物を手に入れないわけにはいかず。すると、選ばれし8編と相見えることになる。 「高尚な創作の世界に、甘い気持ちで足を突っ込んだお前なんぞが太刀打ちできると思うな」  という思し召しに違いないのです。  失敗する度に、よく考えることがあります。  この選択を間違えなかった、成功した世界線の自分もいるんだよな。ある日そいつが自分の前に現れたら。きっと私の同じ性根なのだろうから、「こうやって成功したんだぞ!」「ちょっと考えすぎじゃない? フィーリングっしょ!」などと喚くのだろう。  何が怖いか聞かれたら、「パラレルワールドから自分が現れること」と、結構本気で思っていたりします。  という気持ちが、短編になりました。  エブリスタでの短編は、ほとんど1年ぶりになってしまいました。 『チャイムの音が、』 https://estar.jp/novels/26260417  相変わらず、こういう暗くてよくわからんものを書いていてすみません(笑)。  御縁があれば、是非に。    
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