あめ玉のびん

４粒目：何が違うんだ

　塾に来るのは、決して勉強する意欲のある子ではない。寧ろ逆だ。

　成績の悪い子は、塾の自習時間に自習がどのくらい進んだのか、ページ数で報告しなくてはいけない。

「Ｔ君、今日どのくらい進んだ？」
「３ページっス」
「３ページ……？　え、３時間あったよね？」
「いや、違うんスよ。数学やってたんですよ」
「……数学やってたなら、もう少し進むよね？」
「いや、違うんスよ。めっちゃ難しいんスよ」
「じゃあ、聞きにくれば？」
「違うんスよ、先生、忙しそうだから……」

　すると、それに気付いた教室長が声を掛けた。

「Ｔ、お前『違うんスよ』が口癖になってるぞ」
「え？　違いますよ」
「そういう事じゃねぇ」