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(あの子達は大丈夫かなぁ)
早く行かなければならないのだが、雨が降っているからどうにも出来ない。
クルテは雨は嫌いだが嫌いだからと雨の中歩けないほどでは無い。
雨が肌に当たると火傷をしてしまうのだ。
火傷と言っても1滴当たっただけでは変化は殆ど感じられないが長時間雨の中にいれば肌がヒリヒリと痛む。
(無理するなって言われたからな…)
迷惑をかけたくは無い。
もう雨は土砂降りだった。
時々空一体が光ったかと思うと曇天の中に白く鋭い筋が度々光る。雷だ。
(雨が止むまで待つか……僕、多分今から行ってもあの子達に何もしなくて大丈夫って言われるだけだろうし…)
そうして人通りがほとんど無くなった道を眺める。
ガサ、ガサ。
思わずクルテは目を見開いた。
隣にある木の根元に放置されているゴミが、音を立てて動いている。不自然にその場でゴソゴソと動くゴミは雨を求めるかのように木と木の間の、雨が降り注ぐ所に移動すると沈黙する。
「…………え?」
思わず声を出す。自分の見間違いでなければゴミが動いたはずだ。
正確には沢山積まれたボロボロの安物の絨毯が、動いた。
目を擦るがそれでどうにかなるわけでもなく、雨に打たれながらそこに鎮座している。
少し雨に濡れるくらいなら全然大丈夫だ、と思い木から出ていく。絨毯に手をかけるとモゾ、と動く。
「うひゃっ!」
自分でも情けない声を出しながら後退する。が、再びそろりと近づくと覚悟を決めて絨毯に再び手をかける。雨を吸った絨毯は思ったよりも重くて、「うーーん」と声を出しながら何とか絨毯を持ち上げる。
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