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EP.01 蒼の転校生
ー数時間前ー
「ふぁ~ねみぃ~」
昨日遅くまでマンガを読んでいたせいか、絶え間なく出続けるあくびを噛み締めながら、俺はいつも通り校門の前まで来た。俺の名は黒坂 鋼。ここ、国立九曜高校に通うただの高二の男子だ。毎朝恒例の校長のやかましい挨拶を華麗にスルーして下駄箱に行き、上履きに履き替え、いつも通りに前のドアから教室に入る。全く、今日も平凡な朝だ。などと思いながら窓側の自分の席に座ると、後ろからポンポンと肩を叩かれた。
「よう、黒坂。今日はお前さんに良いニュースがあるぜ」
ニヤニヤしながら俺に話しかけてきたのは、クラス内の友達、ツンツン頭がトレードマークの神田だ。頭は悪いが、明るく元気なヤツだ。あのニヤニヤ顔はムカつくが。
「おはよ神田。なんだよ良いニュースって。どうせ、今日は実機操縦の授業があるってだけだろ」
俺は素っ気なく返事をしつつ、窓の外を見た。広大なグラウンドでは、先生たちが訓練用の全長八メートルはある巨大ロボ、MEの動作点検をしていた。
そう、この九曜高校は、ただの高校ではない。十年前に日本で開発された人型機動兵器、ME。正式名称、“高機動汎用強化装備(High,Moability,General,Purpose,Equipment)”の操縦や運用を学ぶ、日本でも数少ないMEの専門学校なのである。近年増加する市街地での戦闘用として当初開発されたMEだったが、現在では人型である利点を活かして、工事現場や災害救助など、社会の様々なところで利用されている。その為、MEを操縦できるようになれば就職時有利になるということで、九曜のような専門学校に来る若者が少なくない。かく言う俺も、その中の一人であった。
「おーい、黒坂聞いてるか~」
窓の外をぼんやり眺めていた俺は、神田の声で我に返った。
「ん……すまん。何だって?」
「おいおい聞いてろよー。だから、今日うちのクラスに転校生が来るんだってさ」
「え?!転校生?」
これは驚いた。今まで一度もこの学校に来たことがない転校生が、まさかやってくるとは。
「びっくりだよな。ああ、できれば超絶美少女がいいなー!」
「いやぁそれはあり得ないだろ」
などと話していると、チャイムが鳴り、冴えないおっさんである担任が入ってきた。
「みんな席に着け~。朝のHR始めるぞ~」
担任の言葉に従い、みんなゾロゾロと自分の席に戻る。
「みんな席に着いたな。おはよう。突然だが、今日は転校生を紹介する。鷹島さん、入ってきて」
担任が呼び転校生が入ってきたとたん、クラス中がざわつき始めた。無理もない。見事な蒼色のショートヘアに、透き通るような白い肌。くりっとした紅の瞳。慎ましくも丸みを帯びたしなやかな肢体。誰もが思わず目を見張る、まるで芸術品のような美少女だったのだから。
「はいはい静かに。それじゃあ、自己紹介してもらえるかな」
担任の言葉にコクンと頷くと、転校生はみんなの方を向いて、綺麗な、しかしどことなく機械じみた声で話し始める。
「初めまして。鷹島ステラです。父が欧米系のハーフで、母が日本人です。これからよろしくお願いします」
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