EP.02 実力

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EP.02 実力

 突如やって来た超絶美少女転校生、鷹島ステラは一気にクラスの注目の的になり、授業間の十分休みに入る度、多くのクラスメイトが彼女に話しかけにいったのだったが…… 「ねぇねぇ。鷹島さんって、何か好きな食べ物とかあるの?」 「特にはありません」 「鷹島さんって、普段どんなことして過ごしてるの?」 「生命維持に必要なことをしています」 「そ、そうだ!鷹島さんって、スゴくスタイルいいよねぇ~。秘訣とかあるの?」 「別に何もしていませんが?」  とこんな感じで、受けた質問全てにつまらない答えをするので、次第にみんなの興味は薄れ、昼休みに入る頃には誰も彼女に話しかけなくなっていた。その様子を遠くから見ていた俺と神田は、ちょっぴり彼女が可哀想に思えてきた。 「なんかアレだな。ラブコメでいそうな性格だな!」 「いや、そのフォローは無いだろ……。まぁでも、流石に転校初日であれはキツいよな。次の実機訓練の授業で話しかけてみるか」  昼休みが終わり、今日の午後は実際にMEに乗る、実機訓練の授業の日であった。学校指定のジャージに着替えてグラウンドに行くと、そこには先生たちと、全長八メートルはある訓練用ME、TJPー04《(いかずち)》が五機並んでいた。直方体の胴体に腕と脚が生えたようなその姿は、いつ見てもゴツく、正直ダサいと思う。どうでもいいか。 「全員集まったな。では説明を始める。今日の実機訓練は“移動”だ。ただ歩くだけじゃないぞ。直進、旋回、蛇行等色んな動きをしてもらう。それじゃあ各自ペアを組み、教員の指示に従って順次開始してくれ」 先生の話しが終わり、みんなそれぞれペアを組み始める。ここがチャンスだろう。俺は勇気を出して、一人ポツンと立つステラに話しかけた。 「あの~、鷹島さん。俺は同じクラスの黒坂。よろしくな。その、よかったら俺とペア組んでくれない?」 「……構いません。それと、私の事はステラと呼んでください。名字で呼ばれるのは、あまり好きではないので」 「ああ、わかった。ありがとう、ステラ」 俺の言葉に頷くステラ。こんなにあっさりいけるとは……俺ってスゴくね?  数十分後、俺達のペアの番がやって来た。ここはレディファーストで、ステラから乗ることになった。ステラは前の学校も九曜と同じくMEの専門学校だったらしく、慣れた様子で雷に乗り込んだ。 「起動シークエンス完了っと。よぉーし。鷹島、いつでもいいぞ」 『了解』 先生のGOサインと共に、ステラは滑らかに雷を動かし始めた。この授業の課題は最低三動作以上行うことなのだが、ステラは余裕で五動作以上行っている。直進、急停止、右旋回、左旋回、S字カーブ、ジャンプ等々。他の生徒が覚束無い様子で機体を動かす中、ステラの操縦する雷は、まるでスケートをするようにグラウンド内を移動していた。それを見ていた生徒達や教員は、驚愕のあまり手を止めていた。 (へぇ。結構できるんだな) ただの美少女だと思っていただけに、俺は内心驚きもしたが、それ以上に彼女に興味を持った。ステラの操縦訓練が終わり、いよいよ俺の番となった。いつも通りコックピットに座り、基本であるME操縦前のチェックをする。 「モニターよし。各種機器異常なし。耐G軽減稼働中。操縦桿、ペダル共によし。シートベルトもOK。先生、点検終わりました」 『了解。こちらも起動シークエンス完了した。いつでもいいぞ、黒坂』 「了解!」 先生のGOサインを確認し、俺も滑らかに機体を動かし始める。先ほどのステラの操縦は確かに普通の生徒ではできない芸当だ。 (けど、俺なら余裕だ!) 直進、急停止、左旋回、右旋回、八の字を描く動作など、俺の乗る雷も先ほどのステラ機同様の動作をこなしていた。別に俺は昔からコレと言って得意なことはなかったが、MEを操縦するのは人より上手かった。もちろん高校に入ってからの話だが。  俺の動作訓練が終わり機体から降りると、ステラが少し驚いた表情でこちらを見つめていた。 「まさか、私と同じ技量を持つ人がいるとは」 「俺も同感。何か、ステラには親近感を感じるよ」 「……私も」 自己紹介のときと同様機械じみた声だったが、その声はどことなく嬉しそうな、そんなニュアンスが含まれているように俺は思えた。
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