私の才を月が照らす

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記憶容量枠が膨大であることから高値で取引されていたらしい赤子の肉体に、美貌の男娼として客が絶えなかったという男の血を混ぜ合わせて造られたユーファンは、本来ならば高性能な魔力を有し、子に恵まれなかった両親の跡継ぎとなる予定だった。 しかし、両親は、そもそも、生命をつくる、という才が皆無だったらしい。 生殖能力は元より、他者を紡いで合わせる合成術までも、彼らの血では生み出せなかった。 出来たのは、顔の造形だけが異常に良い、ただの人形だった。 殺されなかっただけ良かったのだろう。 いや、あの砂漠に遺棄されただけで殺したと同義語だ。 照り付ける太陽と砂が風で舞い散る、埋められて、火を放たれて、燃え盛る炎を前に、火葬の煙を纏いながら、ユーファンは次元の移動を行い仮眠をとった。
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