魔導師その1

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魔導師その1

ヒロシさんが小学六年生の頃、転校続きで親しい友達も出来ず、いつも教室の片隅にひとりで過ごしていた。あまり目立たない、むしろ目立ちたくない子供であった。その当時、なんとか友達が出来た。その子は女の子で名前を『ウラ』と言った。変な名前だな、そう思ったヒロシさんにウラは、「ほんとの名前はね、『ヴュラ』ってお母さんが名付けてくれたの。でもね、言いにくいし、友達も呼びづらいからって今のウラって呼ぶようにしてるの。ミドルネームよ」へぇ…ますます変わってるなぁ。って言うことはお父さんやお母さんは外人さんなのかな?そうは見えないけど。ウラの顔を見る限り、どう見ても純粋な日本人である。しかしそんなことはヒロシさんにはどうでも良く、ウラと宿題の交換をしたり、学校で女の子と遊ぶのはからかわれるかもしれないと、ヒロシさんの家にウラを招いて遊んだりしていた。ウラは紙に書いた文字や絵の上に糸を垂らしその糸の先端に付いているガラスの玉を揺らしていた。何その遊び?見たことない。そうたずねると、「これは悪魔を召喚する魔法なの」魔法!?すごい!ね、ほんとに呼べるの?「ママが教えてくれたの。練習しなさいって」練習?「練習すれば一人前の魔導師になれるからって」まどうし…?ウラの言うことはよく理解出来なかったが、ウラがやっていたのはなんとなくこっくりさんに似てるかもしれない、そう思い、ウラにボクもやりたい、そう言うとヒロシ君は魔導師じゃないから。そう断られてしまった。「あ、でも素質はあるかもしれないね、こうしてウラと出会ったし、仲良くなれたんだから」と笑顔で言うウラにヒロシさんはなぜか信じたい気持ちになれた。その後も宿題にかこつけ、ほぼ毎日ウラを家に呼ぶヒロシさん。ヒロシさんがウラと飲もうとジュースを用意した。あ!「缶ジュースを開けたら切っちゃった」当時、まだプルトップではなく缶切りで缶の両側に穴を開けていた。その際切ってしまったのだ。「貸して」え?何するの?ウラがヒロシさんの血が出てる小指を掴み口に入れた。音を立てて指を舐めるウラに、こそばいよ、やめて。そうヒロシさんは訴えるがウラは止めようとはしない。チュウ…チュウ…血を吸い取り、「ほらもう大丈夫」ウラが舌なめずりをして、これから血が出たら言ってね、そうヒロシさんにあっけらかんと言い放った。舐められ吸われた時、こそばく口の中が熱くて変な感じだったけど、そんなに悪い気持ちにもならなかった。ウラに仄かな恋心を抱き始めていたのであった。その後も、血は出てない?とヒソヒソと耳打ちして聞いてくるウラ。そんなに血が好きなのかな…。なんだか身体の血を全部吸い取られそうな想像をしてしまったヒロシさん、でも。ウラにだったらやっぱり悪い気はしない。体育の時に転んで膝を擦りむいた時も、砂が付いてるにも構わずみんなが見てる前で堂々と口を付けて、血を吸い取るウラに、男子たちからからかわれ、女子たちからは本気で引かれてしまった。先生にバイキンが入るでしょ!と怒られるまで吸い続けていた時は、さすがに恥ずかしかったとヒロシさんはウラに対して、恋心の他に得体の知れない存在を感じていた。なんだかウラの中に何かがいるような…。
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