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斎場裏の公園のブランコ、
どちらともなく腰を下ろした。
「15・・・6年?」
「それくらいになるわね・・・」
曖昧に私は答えたけれど
16年、はっきり覚えている。
「哉子とは?会ってる?」
「会ってないわ・・・」
「そう・・・」
「でも・・・」
私は美幸の方は見ず
ぶらぶらさせた二人の足元を見ながら
「ずいぶん前に婿養子さんを貰って
幸せに暮らしてるそうよ・・・」
・・・言った。
美幸の足がぴたりと止んだ。
「東大の教授をされてる人。
当然と言えば当然ね・・・
哉子は地方私立大学創始者の曾孫
なんだもの・・・」
「そう・・・そうなの、ふふ」
美幸の薄い笑い声につられて
彼女を見ると
「棺桶の横で聞かなくてよかったわ。
そんなことを敦士が知ったら
また、夜通しの大喧嘩になっちゃう、
ふふ・・・ふふふふ」
学生の頃のふっくらした面影が
微塵もない美幸の頬が
涙で光っていた・・・。
美幸は、親友の哉子の恋人・敦士を
文字通り“寝盗った”のだった。
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