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「…幸太」
オッサンは、一度俺の名を呼び、それから机の隅にあった、白いマグカップに目をやった。さらにもう一度、同じ動きを繰り返す。
茫然と空を見つめていた瞳が、徐々に潤んで輝き始める。
俺に向けられる視線が、異様に熱い。
「…幸太、俺、お前のことが…好きだわ」
「は?」
何、気色悪いこと言ってんだ。とうとう気でも狂ったか?
まずい。
何か、途轍もなくイヤな予感がする。
フラフラと、ゾンビのように両手を上げて近寄ってくるオッサンに、俺はサッと身構えた…
が、一足遅かった。
「幸太、幸太あ!
アハハ、よかった。ホントによかった、この、…お前は…」
サイアクだ!
“洸も俺を”だの、“思いは一緒” だの、意味不明な言葉を連発しながら、オッサンは俺に抱きつき、頭や背中を撫で回してきた。
「や、やめろオッサン。情緒不安定か!?俺には、男と抱き合う趣味はねえっ」
悪態をつき、暴れまわるも、ガタイの良すぎるオッサンは、俺をさらにギュッと締め付けた。
「幸太ーー、俺はお前が、大好きだーーーーっ」
「や、やめろ。俺はキライだっ、ハナセーーー!」
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