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「何でも好きなだけ奢ってやるから」
それ以来、超上機嫌のオッサンの言葉に、俺は甘えることにした。
家から持ってきた食糧は、バターロール1袋だけ。正直なところ、これで2日はキツかった。
会社を出る前に、部屋の電話を借りて、一度だけ家に連絡を入れた。
案の定、電話の前に控えていたという洸が出て、
“どれだけ心配したと思ってるの!”
キンキン声でめちゃ怒られた。
俺の書き置きを見て以来、ずっと連絡を待っていたのだというから、少し悪いことをした。
電話では、『友達に会いに行った』とだけ言っておいたから、洸は俺がオッサンに会いに来てることは知らない。
代わってやろうか?
と目で合図したが、オッサンは慌てて手を振り、
(俺のことは秘密にしてくれ)
と懇願するから、黙っといた。
せっかくのチャンスなのに、チキッた(=びびった)のかと思ったが、やつの腹黒い笑いを見ると、どうやら何か、ろくてもないコトを考えているようだ。
そのあと俺は、1泊して帰ることを洸に告げた。友達の家に泊まると言ったら(ホントはオッサンの家)、
ここでも洸は “じゃあせめてご挨拶を” と言いかけたので、俺はさっさと電話を切った。
電話が終わると、俺とオッサンは、早々に会社を出た。
腹が減って死にそうだった。
箸で切れるくらいやわらかいステーキと、回ってない寿司の店を、二人で梯子した。
オッサンは、
“成長期だろ、どんどん食え”
と食い切れないくらいの量を注文し、俺の皿を山盛りにした。
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