542人が本棚に入れています
本棚に追加
あの日以来、俺は途方に暮れている。
あの夜、君が急に俺の前からいなくなってからずっと。
億ションと呼ばれる都心のタワマンの最上階。
君がいなくなってすぐの頃は、連日連夜、友人達を大勢呼んでホームパーティーを繰り返した。
高級クラブを貸し切って、大勢で馬鹿騒ぎしたこともある。
一度に複数の女と寝たりもしたが_____
そんなことで心の隙は埋まらなかった。
だから今は、
別にあくせく働かなくても、金に困ることもないのに、ほとんどの時間をオフィスで過ごす。
仕事に没頭することで、君のことを忘れるために。
暫くの間、この作戦は成功していた。
だが最近。
黄昏時に社長室に引き上げて、1人になると再び君を思い出す。
悪いことに、前よりずっと鮮明に。
君の笑顔、怒った顔、泣いた顔。
不味いコーヒー、下手くそな活花、右上がりの、丸っこい字で書いたメモ。
俺はどこかで願っている。
君もまた、俺と同じ夢を見、俺を想い、在りし日に思いを馳せて、今なお俺と同じ寂しさの中にいることを。
君もまた、俺との再会を願ってやまないことを。
最初のコメントを投稿しよう!