16人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
────重ねられる唇。
逃れようとして顔を背けようとしても、僅かにも許されない。
拒否の言葉も、吐息も……全て吸い上げられ、抵抗する指も力強い腕で抱き竦められる。
「……ッ!」
嫌、止めて、と声を上げようとすればそれ幸いとばかりに口付けを深くされた。抱き竦められた腕は、押し付けられた身体は燃えるように熱い。
止めて、止めて、止めて──!
こんなことをされたら、誤解してしまう。期待してしまう。
相手は絶対に結ばれない相手。実ってはいけない想い。棄てなければいけない感情。罪の深さに戦いて、罪の甘さに目眩がする。
これは一時の夢──
「澪……澪」
耳を打つ低い声に酔いしれる。この声の主に愛されていると勘違いしそうになるほど、情に満ちていた。
これは一時の夢。
覚めたあとは虚しさだけが残る、至宝の夢────……
最初のコメントを投稿しよう!