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青井祐介は夜の高架下を息を切らしながら走っていた。とにかく遠く、遠くへ向かうように。 手で空を掻き、足はもつれそうになりながらもがむしゃらに回す。まるで何かからか逃れんばかりに必死に走るその様は今の日本においては酷く奇異に映っただろう。 ……見た人が居たならの話だが。 口から出る息がヒューヒューと悲鳴を上げている。肺が苦しい、もう走るのをやめてしまいたい。そう思いながらも足を止める事が出来ないもどかしさに頭が狂いそうになる。 高架下から抜け出し、どれぐらい走っただろうか?闇雲に無計画に動いてた足と頭は地理感を失い、その歩を袋小路へと進めてしまった。自然と足が止まる。 疲労と恐怖でガクガクと震える足を拳で叩きながら、すぐさま踵を返そうとする。 と、後ろから首筋に冷たい風が吹いてきた。まるで冷凍庫にでも放り込まれたように歯の根が合わずガチガチと音を立てる。 祐介は半ば反射的に振り返った。 いつのまにか美しい女が立っていた。 その顔には微笑みを湛えている。 いや、美しいが「女」と呼ぶには少々幼い顔つきだ。セーラー服を着ているのだから女子高生なのだろう。 その女子高生は微笑みを崩さずこう言った。 「なぜ逃げるんですか?……先生」
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