妄想の死角

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妄想の死角

□  案山子山村(かかしやまむら)  戦国時代末期、この村に一名の敗走兵が転がり込んで来た。 敗走兵は戦で消耗する筈であった、貴重な食糧の干したカボスを携えていた。村人たちは転がり込んで来た敗走兵に集団で襲いかかり殺害するや、遺体を畑に埋め、干しカボスを強奪して貪ってしまう。 その翌年、村で正体不明の奇病が流行り始める。 「オデキ」と呼ばれるその奇病は、ひとを凶悪な殺人鬼に変貌させる、おどろおどろしい病だ。一名の村人が「オデキ」にかかり、村人たちを見境なく襲い始めた。 村長は、その村人を生きたままカラスの餌食にする「案山子の刑」に処すが「オデキ」により殺人鬼と化した村人は、一名だけではなかった。 殺人を犯したものが、一名また一名と、案山子の刑にされ、カラスに肉や内蔵を食いちぎられ、虫に血を吸われることになり、カラスや虫たちは、狂暴化し、ほかの村人たちを襲い始めたのだ。 村長は、この被害が大規模なものになる前に終止符を打つべく、村に火を放ち、村長自らも火の中で命を絶った。 それが、この村が案山子村山と名付けられた理由であるが「オデキ」の被害は、この村に限った話ではなくなっていた。 ■
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