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1話
「そこの可愛い子、俺とお茶しない?」
と明るい声が聞こえ反射的に見てしまった。
そんな自分に嫌気が差す。
あそこで女子をナンパしてるのは僕、星月璃の彼氏の東雲涼。
彼は女遊びが激しく、浮気を繰り返している。
しかも顔が良いからナンパされた女の子はコロッと落ちてしまう。
あの人の彼女は僕なのに……と涼に声を掛けられる女子を妬ましいと感じた。
「おはよ……」
小さいながらもはっきりと聞こえる声に振り返る。
「あ、おはよ。身体の調子はどう?」
「まあまあ、かな?」
曖昧に微笑む彼は一ノ瀬零。僕の幼馴染で、涼の親友。
身体が弱く、時々倒れてしまう事もあるのでよく面倒を見たりする。
「零~、おはよ~!」
零を見かけた涼は零に抱きついた。
僕は無視……零には普通に話しかけるのに……
まあいつもの事だからもう気にしないけど。
「ん、おはよ」
零は抱き着いてきた親友をきちんと受けとめながら挨拶をする。
「零、行こう」
僕は零の手を引き一年の教室へ向かおうとした。
「……二人って教室違うよな?」
涼は怪訝な顔をして僕と零を交互に見る。
確かに僕と彼らは学年が違うから、涼が不審に思うのは仕方ない。
「渡したい物が有るの。悪い?」
睨みを利かせながら言えば、涼はなんでもない風に答えた。
「全然? ご自由にって感じ~?」
なにそれ、とイラっと頭にくる。
結局、嫉妬しているのは僕だけか……
若干落ち込みながら教室前で零に薬を渡し、授業に臨む。
と言っても自習なんだけど。
すると、後ろでコソコソ話している女子の会話が聞こえてきた。
「それでね~、あたし涼先輩に抱かれたんだ!」
_____え?
彼女の言っていることが一瞬理解できなかった。
そしてすぐに理解する。
涼は女遊びが激しい。しかも毎日の様に女を取っ替え引っ替えしている。
抱いた女の数も相当いるんだろう。
胸の奥がズキズキと痛みながらも、僕はまた彼女達の話に耳を傾ける。
「マジ? あたしも抱かれたよ。その後沢山の女達とヤってるって言われたけど、あたし気にしない。相思相愛してればそれでいいから」
その言葉にドキッとして、背中に嫌な汗が流れる。
それは、絶対に僕では叶いそうもない事だったから。
「アンタ優しいね。でも、涼先輩本命居るらしいよ?」
「それ、デマでしょ! あたしここ最近ずっと相手してくれるし」
聞いているだけでイライラする内容だった。
僕だって、まだ涼としてないのに……
彼は女遊びが激しい人けど優しい人でもある。だから来る者を拒んだりしない。
でもそれは良い事ばかりではなかった。
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