月下にて

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月の夜は不思議に人でなきものが力を持つ、そんなことを聞いたことがないだろうか。 河原に月が浮いている。ススキや川草に影を落とされて川面にも月が浮いている。 「紺輔様は意中の方がお出来になったようで。 その人の手づからしか物をお食べにならなくなったと。 すっかり痩せ細って仕舞われたと聞く。」 「今宵も御姿を見れはしませぬようで。」 「雅姫様は痛手を負ったような。紺輔様に想い寄せられていたと。」 〽恋しらず泡と消えたしわが姿月夜のかぎろひ現や知らぬ〽 歌が聴こえる。 人の吹く笛の音がすすきの向こうから流れ来る。 「実姫様は灰鬼殿の方へお興し入れだそうな。」
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