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第4章 性天大聖
1.車上
翌朝。
優はなんとか予定通りの時刻に起き出して早朝から休日出勤して、昨日ひっくり返してしまった孵卵器の棚をきちんと元通りに組み立て直した。
同僚と上司の二重チェックを受けて無事OKが出て、再度深々と謝罪して「まぁ悪いのはアーリーだし!」と苦笑いで赦してもらって、お昼ご飯の少し前の時間には、ようやく自由な休日モードに戻った。
アーリーは遅番だし遠方作業に駆り出されたから、たぶん戻っては来ない。
…とは思うが、むりやり昼休みにダッシュで戻ってきて急襲されて、短い時間に何度も犯されまくって痛くて泣かされるという…いつものパターンに陥るのも厭なので、自室にいるのも全然まったく落ち着かない。
広明のお見舞いに行きたかったが、検索してみたらば病院の面会時間は午前中だけだ。
どうしようかなと考えながら、窓の外をみる。
…天気は最高…!
ここしばらくの荒天続きが嘘のような…
晴れ!
( …よし、温泉だ! 温泉だ~!♪ )
ひっそり深々と日除けパーカのフードをかぶって目立つ外見の耳と眼と顔を隠して。
優は、ひさしぶりにひとりきりで、外出してみることにした。
*
森林公園から市街へと至るメインの通路はそのまま観光道路だ。
遊歩道の両脇を飾る花壇の色とりどりの鮮やかな花々と種々の植栽と街路樹の鮮烈な緑とゆったりした木陰。
そして澄み渡った空の青と、日光の金色! 深呼吸して、今日は嫌なことなんかぜんぶ忘れてやるぞ!
…と、いささかの気合をこめて優が歩き始めて…
すぐに。
「やぁやぁ、優くんじゃないか。奇遇だねぇ。」
背後から音もなく自走車が追って来て、わざとらしい偶然を装って声をかけてきたのは。
「…あっ! …小父さん? すごい偶然?! …どうしたのー?」
「こらこら、おじさんは、もうやめたまえよ優くん? 私は今や、きみの上司なんだよー?」
「あっ、そうだった! ごめんなさい局長!」
「例の盗掘団の新情報があって打ち合わせにちょっと寄って来た帰りなんだよ。優くんはお休みで街に出るところかな? 良かったら乗せて行ってあげようか?」
いや、その打ち合わせについてはいきなり同行の部下に丸投げして、
「おっと!急用を思い出した!」
とか、見え見えの言い訳で突如として半休をもぎ取り。
すれ違いで外出してしまったと聞いた途端に優のあとを追って来た、たんなる変質者的行動中の上司…で、あるのだが。
「ありがとう~。でも、お天気いいから、今日は歩きたい気分なの!」
「街まで歩くと30分くらいかかるんじゃないか? 何ならその時間分、岬の先まで連れて行ってあげるよ?」
「えっ、ほんとう? 海? 見たい、観たい!」
「乗りたまえ乗りたまえ!」
みずから罠に陥る無邪気な赤ずきんちゃんを載せたとたんに自走車はすぅと走りだし、その車窓がほんの一瞬だけ、揺らいだ。
中から外の景観は見えるが、外から中の様子は覗けないモードに変更された、合図だ。
「…ほんとに久しぶりだね~ぇ!」
「そうだよねー、3年ぶりくらい?」
「きみがここに就職した後、何度か様子を見に来て…その後しばらくして私が局長に昇進したせいで、ずっと忙しかったからねぇ」
「そうなんだ~」
「…よかったら、昔みたいに膝に乗ってくれないかい?」
「えぇ~? ぼく、もう子どもじゃないよー?」
「まぁそう言わずに。さぁ、さぁ。」
ぽんぽんと膝を叩いて懐かしい笑顔で呼ぶものだから、つい優は乗っかってしまった。
「うふん♡」
背中を軽くもたれさせ、小首をかしげて後ろを見上げながら、嬉しくなって、笑う。
「可愛いね~。優くんは。…本当に。
こんなに大きくなっても…やっぱり可愛い…。」
「えぇ~?」
嬉しい。嬉しい。
笑う。
優は、この人の大きな手のひらで撫で撫でしてもらうのが大好きだった。
自分の身長が大きくなって、一応成人と呼ばれる年齢になっても、やっぱりこの懐かしい手のひらは、大きくて…
温かい。
「可愛い。可愛い…」
撫でられるたびに光が溢れような、くすぐったい感触で。
色々と気苦労の絶えない接触エンパスの優にとっては、出逢うたびに
「逢えて嬉しい、嬉しい!嬉しい!」という純粋な感情だけを、浴びるほどにふりそそいでくれる…
太陽。みたいな人だ。
*
「ほ~ら海が観えてきた~♪」
「あっほんとだ!」
「今日はじつに良い天気だねぇ…」
「ほんとにね~! 今日が休みで良かった~!」
「いやいやまったく… すばらしい偶然だ…♪」
きゅうっと背後から、がっしりした両腕が、優を包みこむように抱きしめてくれる。
「ほんとにねぇ… 逢えて嬉しいよ…」
「ぼくもー!」
自走車はすぐに岬の突端まで走りぬけ、崖の上の見晴らし台にある駐車スペースの一番奥の、海に面したつきあたりの場所に停まった。
平日の穴場のこととて、他には誰もいない。
「…わぁ♪」
ほぼ視界180度が海!
という至福の眺めにうかれて、優は瞳をきらきらさせている。
「ぼくちょっと外に出てきてもいい?」
膝の上でもぞもぞと、もどかしげに揺れるお尻の、
うごめきの…
かわいらしさよ。
「まぁまぁ待ちたまえ。せっかく久しぶりに出会えたんじゃないか~!」
するりと。
優のパーカが、背後に落とされる…
*
「…小父さん?」
「可愛いねぇ。可愛いねぇ…。」
「うん…。ぁ… あっ!」
優は接触エンパスだ。
素肌にあたる手のひらから、おじさんの温かく判りやすい純粋な欲情が、流れ込んできて…
からだが、揺れる…。
「…あっ、おじさん! …じゃなくて局長!
…ダメなの!」
「だめなのかい…?」
掌が…
するり。
するりと…
「…あっ! …あのね!
ぼく温泉の個室の予約したんだった! ほら、ぼく大勢と一緒に入ると、
なんか色々とむだに騒ぎが起きるからぁ…っ!」
さらさらと、撫でまわされて…
声がうわずる。
「…それで個室を予約したのかぁ。
…どこの?」
「市営温泉の! あそこ公園の職員は無料なんだけど!
予約しといて、行かなかったら、次からペナルティが…
……ぁっ!」
薄い初夏向きの半ズボンのすきまから。
するりと、手が入る。
ぞくぞくぞく!
と… 背中が、そそけだつ…。
「…だから…!
だめぇ…っ!」
小父さんのまっすぐすぎる欲情が、おしりのぶぶんを直撃する。
…熱い…!
息が…
はずむ…。
「…可愛いねぇ…!」
おなかを撫でる大きな掌の、なだめるような穏やかな、
優しい律動が心地よくって…!
…こころが。
蕩け、そうだ…!
「…ぇっ ぇっ!
…だめ…! なのぉ…っ!」
くすぐったくて、気持ちよくって。
でもダメな理由もちゃんとあるから、慌ててもいて。
…困ってしまう。
「…まだ、時間前なんだろう?
いまキャンセルすれば、間に合う」
「う! …んんんんっふ…! …あっそうか!」
すでにして喘ぎながら悶えて揺れている優の片腕をとって掌紋と手首のIDを端末にかざし、手早く予約表を開いて予約のキャンセルを入れてしまうと、安心したように、優の全身から…
ちからが、抜けた。
局長は嬉しくて嬉しくて、おもわず笑いをもらした。
「うふふふふふ」
「あぁん…!」
首筋にあたってしまった鼻息が、敏感な部分の肌に、くすぐったかった。
らしい…。
*
「…あとで、もっと素敵なところに連れていってあげるよ…。」
「そうなの?」
「…わたしはきみの上司なんだよ~? お金持ちだよ~?」
「そうかぁ… あっ んっ …!」
「可愛い~ねぇ~!」
「うふん…?」
なでなで。
撫で撫で。
なでなで…。
「あはは… くすぐったいよぅ…」
もぞもぞ。
もぞもぞ。
優の腰が蠢き。
男の掌が蠢き。
いつのまにか服が脱げる。
いつのまにか肌があらわ。
「…あ…っ」
いつのまにか、浮かぶように、細い腰がもちあげられて…
ぬるりと、指が入る。
「あぁっ!」
「おや… 柔らかいねぇ…??」
「あぁッ! …だって! ゆうべアーリが!」
「あぁ… そうだったねぇ…」
ぬくりと。
「あぁ…ッ」
熱い優しい、興奮した…
嬉しくて、いっぱいな、
感情と、いっしょに…
おじさんが!
入ってきて、
くれた…!!
優は…
嬉しくて…
啼いた…!
*
「可愛いねぇ…」
うそがひとつもないことば。
「可愛いねぇ…」
ほんとうに、かわいがって撫でてくれる…
てのひら。
涙が出る。
あぁ…
嬉しい。
嬉しい…!
「…最初にであった時には生まれたての仔馬みたいだったきみなのに」 「あっ… うん…」
「今は、がんばって走り始めた一年仔のような可愛らしさだねぇ…」
この人は趣味が嵩じて資産を投じ、公設の惑星馬術博物苑だけではあきたらずに、全世界全種類全史上の馬をすべて集めると豪語して、私設の馬荷駄牧場を作ってしまうくらいの…
馬好きだ。
「この細いのに逞しいあんよなんか特に、仔馬にそっくりな可愛らしさだよ…?」
「あぁっ」
するすると撫でる…
撫でる。
「ちょっと走ってごらんよ… 優くん」
「…えぇ?」
「きみはおんまさんだよ~。ほら…走ってごらん…?」
「えぇ~?」
言われて、すなおに、左右の脚を…
もごもごと。
もごもごと…
小父さんに芯奥深くまで貫かれたまま、
膝にまたがって…
またがって…!
からだの中芯を貫かれた…まま。
…………はしる…………????
「…えぇ…? 無理ぃ~ッッッ !! 」
素直に左右の腿をいっしょうけんめい、走るように動かそうと。
蠢いて、みて。
優はすぐに音をあげてしまった。
息が、あがる…ッ!
だっておじさんが!
さらに!
さらに気持ちよくなって!
大きくなって!
しまった~っ!
……??!ッ!
「…その走りかたは… ギャロップだねぇ…。
…トロット… って、…知ってるかい…?」
「…え…っ? と、トロット?
って、…こう…?
……あぁ…ッ!!」
うろおぼえの動きを真似しようとしてみた、とたんに。
からだのなかで、おじさんの心棒が…!
ぐずりと。
ずれ動いたので、悲鳴をあげた…。
「あぁ…っ! 小父さん! むずかしいこと… 言わないで、ぇ…っ」
気持ち良すぎて…
涙が出る。
「こらこら。局長だろう…?」
「きょく… ちょぉ…!
無理ぃぃぃぃ…!」
言いながら、まだがんばって…
揺れている…
ずりり。
ずりり。
ずりり…!
「…と… トロットってぇ…ぇ!
無理ぃッ!
だってぼくが馬っていうより、
…ぼくが! 馬に乗ってる、
みたいなっ 恰好だし…ぃ…ッ」
…ぅふふ…! と、男は嬉しそうに…
笑う。
「…そうだねぇ…。優くんは、馬に乗ったことはあったかな…?」
「あるよ! 連れて行ってもらったじゃない…!」
「あぁ。そう… そうだった…」
「楽しかったよ!」
「そうだねぇ…」
「楽しかった! 乗馬って! こう…!
………あぁ、あ!
ぁぁぁああああッ………~~~っ!」
おもわず、
馬に乗って疾走する動きを、再現。
してみて…
「ぅぉ!」
「あぁぁあ…ッ!」
締めつけられ、こすりあげられた男が
感じた…
刺激に!
エンパスで、感情反射して…!!
のけぞる!
「あぁ!」
「ぅぁ!」
「あぁッ!」
「…………ぅッッッ!!」
だくだくだく!
と…
なかに…!
溢れる、ものが…!
熱くて…
優しくて…
嬉しくて…!
優は。
このひと、ほんとうに、
ぼくのことが、大好き。
なんだなぁ…と。
嬉しくて。
嬉しくて…。
*
くるまはあおいそらのした、
ゆれる、ゆれる…
すぐるは、なんども、なんど、も…。
嬉しすぎて。
啼かされて…。
そらと、
うみを、
喜悦の涙にかすむ眼で、
みていた…
2.個室温泉
「優くん… 優クン?」
嬉しすぎてぼんやりしたまま、お姫様だっこで?
いつのまにか連れられて来ていた部屋の畳の上におろされて。
眠っていた優は、優しくゆり起こされた。
「あれ… ここ…?」
「きみは日系だからねぇ。和室にしてみたよ…
オリエンタルな風情で良いねぇ…。」
青々とした畳に床の間。
木製の柱に土塗りの壁。
紙製で横にスライドさせて開ける式の、綺麗な絵の描かれた…扉。
「…すごい…!」
(…なんか観光案内の写真でしか見たことないような、立派な部屋だー!)
と、優は目を丸くした。
「すごいかい…? 気に入ったなら、良かった…」
すとんと、座布団の上に背なかをたおされる。
「え…?」
「もっと、よく… 見せておくれ…」
「あんん… 小父さんっ!」
「局長だよ…?」
「局長~! …ぼく、おなかすいたぁぁ…っ!」
…ぅふふと。
思わずつっぷして、局長は笑った。
「もう少し待っておいで。注文は、しておいたから。」
「あっそうなんだ。」
「少し…すりむいているねぇ…?」
「それねぇ、アーリーがねぇ! …酷いんだよ!?」
「…痣もある…」
「だからアーリーが! …あぁっ…!」
内腿の噛まれ傷の痕をするりと舐め上げられて。
「…ごめんよ? 痛いかい…?」
「ううん…。…舐めたら、早く治る…?」
「…うんとたくさん、舐めてあげようねぇ…!」
「…あぁ…っ!」
着せられていたはずの服がまだはだけられて、すぐに全裸にされて…
*
くすぐったかったり、むず痒かったり。
舐めに舐めまくられて…
優は、また、声がうわずる。
「あっ んっ …もうっ!」
「もう?」
「やめてぇ…!」
「…嫌かい…?」
「いやじゃないけどー!」
「けど?」
「…ああ! …ん…っ!」
…もどかしい!
「もっと! おじさんに… 触り!
…たいの…っ!」
「…どこに…?」
「えぇ?」
また…! 難しいことを聞かれた…!
と、 ショックを受けたような顔をする優は、…本当に可愛い。
「ぼく発情期じゃないんだから判んないよぅ!」
「そうかい? …おや?」
「なに?」
「そういえば… 耳翼の毛冠が…
それに、ここも…!?」
「あぁッ!!!!? …だめ! そこはだめ…ッ!!!!!」
前側の。
誰にも触らせない。
触らせてはいけない…
生殖孔の、
上の。
*
「あぁッ! だめっ!」
ごく細い、割れ目の筋を…つるりと。
「だめだってば! そこ感染症に! 弱いの!
…触っちゃだめぇぇぇぇぇっ!」
「…知ってるよ…?」
「小父さんっ」
「局長だよ?」
「…局長! 知ってるでしょ! ぼく絶滅危惧保護種!」
「…知ってるよ…?」
「だめってばぁ! …あっ!」
キスされる。
そのすきまに。
まるで…
くちびるに、
するように…
「えぇっ?!」
音をたてて、
またキスされる。
…繰り返し…
…繰り返し…
「…あ! …あっ!? …!」
じっとしていられなくなって…!
じたり! ばたり! と…
悶えた。
腿と腰を抑えこむがっしりした腕と手指の。
すべての触れ合う皮膚のめんせきすべてから。
男の。
興奮と、愛情と、喜びの… 感情が!
…なだれこんでくる…!
「…あぅん!」
ずるりと。
啼いて、ちからのぬけた、
一瞬に…
「ぃゃっ!」
優は、叫んだ。
*
すきまに… 舌が!
舌が!
舌が……ッ!!!!
するりと、
するりと。
左右、に…
「あぁあ! …ん、んんっ…!」
「ぃゃはぃ?」
…陰唇を、深く咥えこんで舌を隙間にもぐらせたままで…
喋らないでほしいッ!
と、
いうひまも、なく…
優は、跳ねた…。
「あぁぁはぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「ぉゃ…」
「いやっ! だめぇぇぇぇぇっ!!!」
「ぃぃのはぃ?」
「ぃやぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ふぐるくん?」
「ぃやっ ぃやっ ぃや~~~~っっっつ!! …!! ?! ?!」
腰が跳ねる。
跳ねる…
勢いで、舌が。
深く。
くいこんだ…!!!!!
「ひぃッ!」
のけぞった。
固く閉じていた。岩戸が開く。
ほんのりと。赤く色づいて…
すかさず潜りこんだ、舌先が。
まだ硬い、青い芽の、幹に…!
「………きゃあああああああああああ!」
驚くほど高い声が出てしまって、優は必死で自分の口を塞いだ。
( …なに?! 今の…!!!!!!ッ? )
*
「すこし… ほぐれて… ないかい…?」
「えぇ?」
はぁはぁと息が荒くなりすぎて気絶しかけた優の。
からだを気遣って、舌先で悪戯をしかけるのは、いったん、停めてくれて…
しかし優の腰部を斜め脇からがっちりと抑え込んだまま。
男はしげしげと、その花びらの色づきかけたさまを、
鼻先をつっこんで…
観察している。
ふぅと。
息を!
ふきかけられる…!
「…ぃやぁっ!」
優は叫んだ。
「ふふぅん…?」
ぱくり。
「なに局長! だから、いやぁっ!」
びくびくと体が震える。
なにこれ? なにこれ…???!
するりと、指が…
割れ目を。
「いやいやいや」
「だめってぇ!」
「いやいやいや… だって… ほらね?」
「ぁあ!?」
びくびくびくんと、優は、跳ねた。
「だめぇ!」
「すきまが、ひらいてきているし…
ほら…
もう、指先が…
入るよ…?」
「あぁぁぁぁぁ!」
つるり。
つるりと。
指が…!
「あっあっあっ」
「…きみは… 地球人とのミックス。だからねぇ…」
「あぁん! だから、…なにっ??」
「かわいねぇ…」
「あああ! ん! んんん…ッ!! !」
ぬらり。
からだが。
ぬらり。
…え?
濡れる…?
溢れる…???? …ッ?
「まだまだ、細いか…」
そう呟いて、男は、前の秘泉からは、唇を離した…
*
「…あっ」
唐突に。
後ろに、
指が!
回された…!
「あぁっ!」
ぐぬりと。
「あっ!」
「こちらは、いちどに四本挿れても、余裕だねぇ…」
「ああんっ! んんっ!?」
掻きだされる… さっきの!
「いや…
やめて…!」
「なぜ?」
「は… 恥ずかしい…! やめて…!」
「おやおや…」
指はしばらく遊び回っていて、変な水音がたつので…
優は、恥ずかしくて。
自分の両腿をかかえこんで…
その両膝で、顔を。
…隠そうとした…
「…おやおや…!」
男はあまりにも嬉しそうに笑う。
わらう…!
「…可愛すぎる眺めだ…」
「あっ!!!!!!」
腰を… 持ち上げられた!
「あんんんんっ!」
ぐいと。
そして…
ずぬり。と。
「あぁぁぁぁぁっ!」
*
ぐいと。
ぐいと。
ぐいと。
「あっ」
ぐるりと。
ぐるりと。
ぐるりと。
「あ、んんんっ!」
ずるりと。
ずるりと。
ずるりと。
「いやっ!」
ばくりと。
ずくりと。
そして、
ぬらりと…!
「あ~~~~~! んっ!!!!!」
ごぶり!
「ぅあぁんんんっ!」
優が感じている感情は。
男が感じている欲情だ。
感情が。
…反射する。
共鳴する。
共震、
する………ッ!
「…ぅおッ!」
「…あっ、ぁ、
あぁぁぁぁぁ~……………………ッ!」
再び、大量に放たれて。
男の歓喜が、からだのおくで、…爆発。
し続けて…
優は。
もう、なにもかも、わからなくなって…
…啼いた。
3.露天風呂
「…ぼくわぁ! お風呂に! 入りに来たのに~っ!」
しどけなく気絶していた姿にユカタを着せかけられて、食事が届いたよと。
起こされた時には、優はもはやまともに座ることもできない状態だった。
くすくすと笑いながら上機嫌な局長は帯もてきとうに締めてやり、卓の前に寄りかからせて、オートワゴンで運ばれてきた大量の盆と皿をどんどんと目の前に並べて見せてやる。
「…ぅわぁ!」
とたんに瞳の輝きが戻り、満面の笑顔になって。
おかしな角度で横座りして肘を食卓についたままのお行儀の悪さだったが、あっという間に色鮮やかな魚介類を盛りつけた皿も白飯の腕も、ミソスープの器も、どんどんからになっていく。
「…いい食べっぷりだねぇ…。…美味しいかい…?」
「すっごく美味しい! ぼくこんな豪勢なごはん初めて食べた!」
「…職員の給与じゃ足りないかい? 植物園の…」
「…ううん~? 公務員だし、同じ年の民業の人たちより、はるかに高給だと思うけど…?」
「けど?」
「ぼく気がつくと学会誌とか論文集とか資料とか写真集とか、研究会の交通費とか宿泊費とか懇親会費とか! とかとかで…
食費がなくなっちゃうの!」
「あぁなるほど。」
笑う。
「でも職員寮のご飯は安くて美味しいからね! ツケもきくしね!」
「市営の温泉もタダだし?」
「うんそう。大好きな仕事に就けて幸せ♪」
「うーん、そんなにイモリちゃんが可愛いのか…」
「ぼく最近カタツムリも大好きになったよ? すっごい多種類でほんとに飽きない!」
「そうかそうか…」
「小父さんは、やっぱり馬? 馬が一番大好き?」
「きょ・く・ちょ・う。」
「そうでした!」
そんな話をしている間に皿はすべてカラになる。
ポットに入っていた温かいお茶を注いでやる…
緑茶だ。
「いい香りだ…」
「ほんとだね~! …御馳走さま!」
「…ところで、お風呂なら、あるんだよ…?」
「え?」
くいくいと、明るいほうを指さす。
「日系地球人が大好きだという、露天風呂付個室。とかいうやつだね?」
「………うひゃ~! 初めて見た! …本物っ!?」
「そうかい?」
「これすっごく高いやつでしょう? ぼく一度でいいから来てみたかったの~!」
「それはよかった…」
よろよろと、腰が定まらない、あぶなげな、あやしい足取りで。
とたぱたと、とたぱたと…
一目散に。
「これこれ。食後すぐのお風呂はからだに良くない…
まず体を洗ってあげよう…」
男も、すぐにあとを追った。
*
「………オーシャンビューだーーーー…ッ♪」
高層階から海と岸壁を眺め降ろす格子にしがみついて。
可愛いお尻とみじかい尾が揺れる。
「ずいぶん汗をかいてるだろう? まず頭を洗ってあげよう」
「えぇ? じぶんで洗えるよ!?」
まぁいいじゃないかとごまかして、小さい腰かけに座らせて。
まずシャワーでたっぷりと濡らしてやり、可愛い頭髪を泡だらけにしてから、ゆるゆると細かく、指の腹で…
くまなく撫でまわす。
「…ふふっ…」
「なんだい?」
「おじさん、今ぼくのこと生まれたての仔馬だと思って洗っていたでしょ?」
「ばれたか…」
「ぼくのこと本気で馬だと思ってる時あるよね?」
「おや? …すまない。優くんは人間だよ?
なにか失礼な言い方をしてしまった時があったかな?」
「そうじゃなくてー!
おじさんって、ぼくのこと、珍しい動物だから、好きだよね?」
「………おや? そうかな…………?」
「ぼくぜんぜん馬あつかいでも楽しいからいいよ! おじさんは馬が一番好きなんだから! それと同じ扱いって、してもらえるの嬉しいよ!」
「…そうかい…?」
少し、釈然としないものも感じたが…。
「流すからね? ちょっと眼を閉じておいで…?」
「うん!」
すべてを信じて目を閉じ、全身をゆだねてくれている…
「あれ?」
思わず、抱きすくめていた。
*
「…なに?」
「…そういえば… まだ、唇に、キスをしていなかったねぇ…」
「えぇ?」
「してもいいかい?」
「えぇぇ?」
「いやかい?」
「いやじゃないけど…」
「けど?」
「ぼくはお風呂に入りに来たんだってばー!」
さすがに、唇に帰す⇒したら、またさっきの続きの試合再開…
という流れを悟って、優が慌てて抗議する。
「…ふふふ」
「いやん!」
するりと。
ぜったいにことわれなくしてやろうと。
ほそい、くびすじに…
てのひらを。
欲情に燃えた、熱い、てのひらを…、
「じゃあ… 優くんから、キスしてくれたら…
お風呂に入らせてあげよう…」
「えぇ? なにそれ?」
「いやかい?」
「えーと…」
ちょっと困った顔になる。
「いやかい?」
「じゃなくて…」
「どうした?」
「…キスって…。
…………………どう、やるの…………… ? 」
「えぇ?」
「…ぼく、自分から、したことって、…ないかも…」
どくんと。
男の、心臓が、
…跳ねた。
「それはぜひ! ぜひ! してみてほしいなぁっ」
「えぇ~???」
抱きしめて、肌を合わせる。
わくわくの!
期待の気持ちが、まちがいなく!
伝わるように…!
「…うーん…」
優は、困った顔をしながら、まっすぐズーム!
という感じで顔を近づけてきて…
鼻が。
当たった。
「…あれ?」
言いながら、唇が… かする。
「…これあんがい、照準が…? 難しいね…?」
…もう。
待っては、いられなかった…!
*
「…あっッ」
濡れた檜の床の上。優のからだが。
濡れて綺麗だ。
「んんっ」
陽の光が、あますところなくあたって…
白い。
白い。
「ああんっ」
すみからすみまで、洗いつくしてあげたく、なるだろう…????
「いやっ …っ!」
泡をつけた手指で、股間をこすりあげてやると…
悶える。
悶える。
もがくように、時々抗うのが…
可愛くて。
いたずらを。
してしまう…!
「あぁんッ! あぁん! あぁんッ!!」
床の上でのたうつ。
指がむなしく空を掻く。
「やめてぇぇぇぇぇっ」
後ろから、犯した。
…可愛すぎる…!
「ぃやぁぁぁぁ! 小父さん~っ!」
あまり待たせずに… 今度は…
放った。
*
「…だから! ぼく、お風呂…!」
涙目で怒っているのも、可愛い。
「よしよしよし。…待たせたねぇ!」
かかえあげて檜の湯船に入れてやる。
いい香りだ…
「うふん… あぁ~!!!!」
性の快感と恍惚に共鳴「させられている」時とは、まったくべつの。
無邪気な声で鳴く。
「きもちいいかい?」
「すっごく! ぼく日本式のお風呂大好き~!」
「そうだねぇ… すばらしい文化だ…」
のびのびっと伸ばした手足もからだの中心も…
すべてが、白日のもとに、さらされる…
露天…
「…あれ?」
「いい眺めだ…」
「小父さん~??」
「局長。」
「…きょくちょお~! セクハラやめて~!」
「…ははははは!」
そんな言葉、知ってたのかい…?
「いやっ お湯が入るッ」
「おやおや… 中身が残っていたねぇ…
お湯が濁ったよ…」
「やめてぇっ!」
「これはいやなのかい?」
「ごそごそしないでぇッ」
「だから、なぜだい?」
「おしりのなか、触るなんて変でしょぉぉぉっ?」
「…あまり… 触られたこと… ないのかい…?」
「だって挿れる時って入口だけなにか塗ったりされることもあるけどっ」
「だけ?」
「そんな…っ 奥まで…っ
あッ! …いやぁッ!」
「ほぅ…」
「いや! いやぁッ!
…あぁぁ!」
「そうかぁ…」
再び。
*
優は…もう。
青い空を見ながら…
抱かれて…
抱きしめられて…
キスされて…
揺られて…
揺すられて…
唇をなぶられて…
舌を吸われて…
秘所を、撫であげられて…
両腿を。
あげさせられたり…
閉じさせられたり…
ななめにねじられたり…
よこむきに渦巻きのように掻き廻されたり…
空を見上げたり…
海を見ながら。 だったり…
もう。
お湯に入っているのか、
お湯を入れられているのか、
おとこに抱かれているのか。
おとこを抱きしめている。
のか…、
もう。
……………
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