序 章  天使の烙印

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序 章  天使の烙印

 いきなりキスされた。  前歯がぶつかった。  ガチンて痛かった。  舌まで入れられた。  はぁはぁいってて、  冷や汗かいてて、  がくがく震えて、  股間が硬かった。  びっくりしたのでカタマッテいた。  だってどうしてそうなったのか。  いきなり過ぎて、反応できない。  どうしたの、突然?!?  これはどっちだ?  好意か?  暴力?  どう、反応したらいいの…????  背骨が痛くなるくらい、  のけぞって。  口づけられて。  深く。深く…。  …唾液が。溢れて。  熱くて。暖かくて…  喉の奥まで、垂れてきて…  …すこし、息が、…苦しい。  …目を閉じた。  いやじゃ、ない。  これは…  優しいよね?  暴力じゃ、ないよね…?      ◇  いやじゃ、なかった…  …んだけど。  腕を離された後は、ただもう恥ずかしくて。  恥ずかし過ぎて。  顔を、あげられなくて。  何も言わずにいたのが、  気分を害した?  …らしい。  それからずっと、避けられている?  悲しい。  哀しい。  さみしい。      ◆  いきなりキスしたのは悪かったと思ってる。  地獄の底より深く真剣に反省している。  まずとにかく「していいか」どうか本人の意思を聞くべきだったし、  いやその前に「なぜ、したいのか。」を伝えるべきだった。  だけどそもそも説明が、うまくできるものなら!  イキナリ。なんてことには、ならなかったわけだし。  なにを、どこから、説明したらいいのか?  どうやったら、解るように説明できるのか…!  …とにかく、反省だけはしている。  これじゃただの変質者じゃないか!  間違いなく、性的暴行だ。  セクハラなんてレベルはとっくに通り越してる。  いっそのこと、 「通りすがりにいきなり抱きついてきてむりやり接吻して、  舌まで入れたうえに、勝手に腰をこすりつけてきて、  一方的に路上で立ったまま射精までしやがった、  コイツ変態です!」  …と。  まさしくただの痴情犯として、  警察に通報してくれることを、願ったが。  …あいつは、そんな冷酷なこと、しない…。      ◇  その後、あいつをまともに見れない。  遠くに見えたら、ひたすら逃げ出す。  だけど、最近、なんだか…  元気が、ないよな…?  …心配だ、心配だ…!  
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