夢から醒めても。

2/5
前へ
/11ページ
次へ
靄のかかったような頭の中を整理しようと、しばらく庭を眺めていると、 「お嬢様。こんな所にいらしたのですか。」 と、馴染みの顔が現れた。 風邪をひきますよ、と私の肩にブランケットをかけ、優しく微笑む彼は、私の幼馴染であり今は使用人の1人。 「今日は、満月が綺麗ですね。」 使用人の彼、楪 卯多(ゆずりは うた)は、そう言ってとても綺麗に笑った。 その笑顔は、やっぱりどこか遠くて、ひどく悲しい。私たちが幼馴染じゃなくなったのは、一体いつだったのだろう。 きっと、ずっと変わらないって。そう笑いあえたあの日は、いつの間にかどこかに落としてしまったようだった。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加