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「 港に何の関係があるのよ。港のせいにしてアンタは何を考えてるのね。」
ものすごい剣幕で今日子は怒鳴る。
「 港君のいとこですから、会いたいんじゃないでしょうか。」
「 お父さんが年賀状のやり取りをしてたはず、ほら、そこの箱の中にあるが。」
( お父様が年賀状のやり取りをしてた?)
富士子は初めて聞いた。1円もお金を払いたくないからと幸太郎と義理の両親は一切の関係を絶っていたと聞いていた富士子は、義理の父親が一体何の為に年賀状のやり取りをしていたのかを不思議に思った。が、そこの箱の中に住所がわかる年賀状が入っているならばと、ホコリをかぶった古い箱を開けて探した。目の前サッシの向こうに夫が見える。柚子の実は木の上まで鈴なりでお母様の為に実を収穫するのが夫の仕事だ。雪が静かに降っていて夫は雪の中に沈む。
( ひと通り見たはず。無かった。名前が違うのか?
内容も見たはず、無かった。無い。)
お父様が亡くなるまで送られて来た年賀状の束を富士子はもう一度見直す。その数の少なさに改めて驚きながら。富士子は手の痒みに我慢が出来なくなり、
「 お母様、ここにはありません。」
と、言うと、
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