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プロローグ
満月が照らす真夜中の学園。
廊下から窓を見ればほぼ真横に月が見える。自身の影がやけに長く伸びていて、その光景は異様だった。
そんな校舎内を、苺摘 廻兎は必死に走っていた。
後ろから追いかけて来る無数の影から逃げる為に。
満月は一人の逃げる青年と、その後ろには狼や誰かの手が蠢く姿がそこにはあった。
「ハァ、ハァ…!何が起きてるんだよ…!」
苺摘は足を止めずに、苦しそうに自分の片目を抑えていた。廊下内を唯ひたすら走る。
「捕まったらヤラれる!捕まったらヤラれる…!!」
恐怖による心臓の鼓動と、大して持っていない体力のせいで既に息が限界だった。
ヤバい…!ヤバい…!ヤバい…!
目の前は行き止まりで、大きな扉が立ち塞がっている。迫り来るその壁に、苺摘は絶望を覚えていた。
どうしよう…。もう無理だ…!
いや、いっそ、どうにでもなれ…!
苺摘は扉の所まで行くと、手を着いて思いっきりそれを押した。
「開いた…!」
まだ逃げられる!
彼は開かれた扉の中へ飛び込んだ。
ーその先に続くものが何かも知らずに。
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