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中休みになり、苺摘は夜色を食べるべく、スクールバッグからお弁当箱を取り出した。
この学園には学園に食堂もあるらしいのだが、波旬の要望により二人は教室で食べる事にしていた。
青い布包みを広げると、中にはラップにくるまれたサンドイッチが入っていた。野菜がたっぷりと入っている。照り焼きにされたチキンと玉子も挟まれていて分厚い。食べるには頬張る必要があるサイズだった。この夜食は環が作ったものだ。波旬は見た目の割に料理が得意で、作られるものはどれも絶品だ。
サンドイッチに手を伸ばしてラップを剥がした。苺摘の口に入る直前、背後から聞き覚えのある声が聞こえた。
「やぁ!2人とも。︎学校生活は楽しめてるかい?」
「…?!あ、こんにちは…?」
苺摘驚いて後ろを振り向くと、にこやかな笑顔を纏ったワイン色の瞳をしたブロンドヘアの生徒が立っていた。左耳に下ろした前髪をかけている。彼の腕には赤色の腕章が付けられていた。そこには水色のラインも入っている。
新田 颯。彼はこの学園の生徒会長をしている生徒だ。先日二人が此処に到着した際は、自ら彼らを出迎えていた。
含みのある笑みをいつも浮かべていて、余裕のある雰囲気を纏っている。実年齢よりも大人びた空気を持った二人よりも、更に達観した表情をしていた。
「楽しむも何も、ただ授業を受けていただけだ」
新田を見た途端、急に不機嫌になった波旬が舌打ち混じりに苺摘の代わりに返事をした。
「そうだった。いつも君達の事を見ていたから、すっかり忘れていたよ」
「気持ちわりぃ、悪魔が」
「悪魔じゃなくて颯だよ。は、る、か。でも、韻を踏んでいるね。新しい発見だ!」
そう言って新田は微笑んでいる。噛み付く波旬を相手に気にしていない様子みたいだ。
「音は一緒だね。凄いな、環くんは」
これは本心なんだろうか。相当強いメンタルらしいと苺摘は苦笑いをした。新田の一撃により、更にこめかみに血管が浮き出た環が呪い殺すような目で彼を見た。
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