悪魔との契約

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悪魔との契約

 放課後になり、波旬と苺摘の二人は山中に連れられて生徒会室へと向かっていた。窓から差す月明かりが、彼らをしんと照らしている。この学園では、いつも見るよりやたら月が近く感じる、まるで覗かれているみたいだと波旬は何となく思った。  一方、廊下を移動する苺摘の足取りは軽かった。初めて平和に学校生活を終えられた。それが嬉しくて仕方がなかったのだ。かと言って浮き足立つわけでもないが、ホッとしているのは事実だ。それ程までに今までが壮絶だった。 「二人の事は俺も大体把握しているよ。廻兎の不幸体質に関しても」  山中はそう言った。マーブル模様の散りばめられた瞳を苺摘に向ける。 「この学園にいたら確かに安全だけど、かと言って廻兎の不幸体質が全て無くなるわけではないから、気を付けてね。今日は満月だからかなり安全なんだけど…」 「月の満ち欠けが関係あるのか?」 「かなり。環も三日月の辺りは気を付けてあげて。勿論、廻兎、君も気を付けて」  苺摘には二人の会話がよく分からなかった。しかし、波旬が彼を嫌う理由はなんとなく察しが着いていた。 「颯さんって、もしかして」 「種族で言うなら悪魔だよ。種族で言うなら、ね」  山中は何食わぬ顔で言っている。ここで苺摘は初めてこの学園が普通ではない事を把握した。苺摘の顔色が少し悪くなる。  波旬が新田を嫌う理由も分かったのだ。  苺摘と悪魔には因縁があった。彼自身の不幸体質も、悪魔の存在が原因にあった。 「ただあの人は凄く変な人だから。相当な事が無いと人を取って喰わないよ。まぁ…確信は持てないんだけど」  山中はこめかみを掻きながら苦笑いをした。
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