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「ついたよ」
廊下の先に一際大きな扉があった。装飾の施されたそこには、山中の腕章と同じシンボルが刻まれている。五角形を円が囲っている。その真ん中を逆さの十字架が貫いていた。そんなデザインのマークだった。
山中がドアノブに手を添えた途端、扉は重厚な音を立てて自動的に開いた。
中に入れば、新田がいた。広々とした空間の真ん中に、談話用のテーブルとソファが置かれている。その奥にまた扉があった。恐らくその先が本当の生徒会室なのだろう。ここはエントランスか何からしい。
「ようこそ、生徒会室へ。さぁ座って」
新田以外に他の役員はいなかった。にっこりと微笑んだ彼がぽんぽんとソファの布地を叩く。
彼に促されて三人は腰掛けた。新田の右にある一人がけのソファには山中が。対面にある横長のそれに波旬と苺摘がそれぞれ座った。
「えー、廻兎くん、僕の隣に座ってくれないの」
新田はそれを見て残念そうにしている。波旬は「当たり前だろ」と静かにキレた。
「環くんはつれないなぁ。まぁ無理もないよね、最初は僕も君に…ふふ。契約を持ちかけようとしたから。冗談だったんだけどな」
(あぁ、だから…)
苺摘は波旬が新田を酷く嫌う理由を察した。彼が悪魔である事だけでは無い。どうやら新田は見事に波旬の地雷を踏んでしまったらしい。苺摘自身も少し身体が硬直した。悪魔の契約を今現在どっしりと体験している身だ。その二文字の恐ろしさを身をもって知っていた。二人にとって、かなり笑い事ではない。
「颯、最低だな。廻兎と環が笑い事で済ませられる事じゃないのは分かってるだろ」
「ごめんね、誘惑って悪魔の性分だから」
山中はケロッと言ってのけた。それを聞いた新田は流石に反省したのか、素直に謝っている。
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