新しい生活

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 校舎への道の中、苺摘は波旬と並んで歩いていた。ふと夜空を見上げる。満月の周りには星がキラキラと輝いている。街灯は柔らかく辺りを照らしていて、落ち着いた雰囲気を醸し出していた。  寮は住宅街のようになっていて、一本道の通りを抜けた先に校舎へ続く大通りに合流する。二人はその道を歩いていた。  苺摘と波旬は、この学園、月詠学園(つくよみがくえん)に、高等部二学年の生徒として、新しく入ってきた転入生だ。  この学園は、他の一般高校とは大きく異なる部分がある。  それは、この学園が夜間学校である事だ。進学校ながらも日が暮れてから授業が始まる。世にも珍しい学校だった。  そして、もう一つの特徴に、ここが全寮制の男子校である。という部分があった。この学校は都内に作られた埋立地である離島に存在していた。島全体は娯楽施設等も併設されており、暮らしていて何一つ不自由のない立地だ。一つだけ難点をあげるとすれば、離島であるが故に、ここへ来るには専用のモノレールや橋を渡る必要があるという部分くらいだった。  駅も近いので都内へ遊びに行くのも特に不便もない。夜間学校でありながら、受験者数の多い人気の学園として名を馳せている。  そんな月詠学園に、これから二人は通う事になる。  今日は登校初日だった。初めての転校、ドキドキしている…というわけでもなく、二人は比較的落ち着いていた。通りを歩く他の生徒達は、見知らぬ二人を物珍しそうに眺めていた。新しい転校生だろうか。学生にしては大人びた表情をしている。周りから見たらそんな印象だった。 「まずは職員室に行けばいいんだよな。道に迷わなければいいけど」  石で出来た通りを歩いていく。目の前にはゴシック建築の建物がそびえ立っていた。四角形の校舎の奥、時計塔が突き出ている。 「海外に来たみたいだな」  そんな印象を受ける外装をしていた。
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