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校舎に入った2人は、早速職員室へ向かった。
自分達が入るクラスの担任である、曜先生に挨拶する為だ。
職員室の扉をノックし、苺摘はガチャりと開けて中を見た。
「おはようございます。新しくこの学園に転入する事になりました、苺摘って言います。曜先生はいますか?」
確か、自分達の入るクラスの担任の先生は、名前が曜って名前だったはず。どんな人なんだろう、苺摘は若干ドキドキしながらも職員室内を見渡した。
「あー俺、俺だわ!」
その中で一人、若そうな男の先生が手を挙げていた。それはクリームベージュの髪を長く伸ばして後ろに纏めた、薄茶の瞳の…
「…ホスト?」
みたいな人だった。それを聞いた燿は人懐っこい笑みを浮かべて立ち上がった。
「おいおい、それは教師に言う言葉じゃねぇぞ?苺摘くん」
曜はニヤニヤしながら彼らの元へ行く。歩き方から何から妙に色っぽい。きっと男女共に人気がある筈だ。それが一目で分かるレベルでとても綺麗な人だった。身長は波旬とそう変わらなかった。長身だ。
話し声には艶があり、どことなく人懐っこそうな印象を受ける。教師らしくない。苺摘と波旬は二人揃ってそんな印象を受けていた。
曜は前髪を左耳にかけながら生徒名簿を開いた。先生はピアスをしているらしく、青みがかった紫色の石がキラリと輝いている。
「苺摘廻兎くんと波旬環くんね。これからよろしくな。曜 晶って言います」
そう言って片手を差し出してくる。その手を苺摘は握った。曜はそんな苺摘の様子を見ると、嬉しそうに笑みを深めた。
間近で見ても整った顔をしている。悪い言い方をすると、とても頭が悪そうな容姿と話し方だった。教師として大丈夫だろうか、そんな心配すら浮かんでくる。
苺摘の後に曜と握手をした波旬は、遠慮もなく心で思った言葉を放った。
「先生、ちゃんと勉強教えられるんですか?」
「はは!よく言われる!」
「ちょ、お前!先生になんて事…!」
窘める苺摘とは裏腹に、それを聞いた曜は特に怒るという行為もしなかった。逆にお腹を抱えて笑っている。
「波旬お前メンタル強過ぎ。心配しなくても、クビにならずにここにいる時点で俺はちゃんと教師だから」
そう言って曜はにっと笑った。対応を見る限り、見た目の割にしっかり大人だ。そんな印象を受ける。
「着いてこいお前ら」
柔らかい髪をはらりと靡かせて、曜は前を歩き始めた。そんな彼の後ろを、苺摘たちはついて行った。
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